公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA OFFICE

全国のオアズパーソンへの手紙(第96信)

2020年8月4日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

日本ボート協会の2020年度定時社員総会を7月23日(木)に神宮のJSOS(ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア)14階の「岸清一メモリアルホール」で開催しました。新型コロナの影響で「大きな集会は控えるように」という指針も出ていて「形式的な書面会議で済ますか」という意見もありました。しかし、年に1度の大事な総会であり、感染防止に十分配慮した上でやはり集まろうと決断し、予定を1ヵ月繰り下げて開催にこぎつけました。「遠方の方は出席を控えてください」と事前に要請したこともあり、当日の出席は社員数96名中9名で、おそらく今までで一番少ない総会出席者だと思います。しかし執行スタッフ(理事、監事)はほとんどが集まり、やはり顔を合わせて話をした方が、中身が充実したように思うのは、わたしが古いタイプの人間だからでしょうか。

(なお、「社員」という呼び方に違和感を持つ方もあるかと思いますが、これは公益社団法人としての定款に定める、いわば法律用語です。47都道府県の代表者(47名)と理事会が推薦する学識経験者(53名)の合わせて100名が総会で「社員」として選任され、彼らが全国のオアズパーソンの代表として「社員総会」を構成しているのです。)

開会にあたり、わたしは次のような趣旨の挨拶をしました。

「2019年度には当協会100年の歴史のなかでも特記すべきいくつかの成果がありました。まず6月に念願の「海の森水上競技場」が完成しました。そして8月にはそこで「世界ジュニア選手権」(FISA主催のレガッタとしては1964年東京オリンピック、2005年長良川世界選手権に次いで3回目)を開催、新コースは各国の高い評価を得ました。

一方、選手の活躍としては8月末オーストリアで開催された世界選手権で、女子軽量級シングルスカルで冨田千愛選手が日本の女子選手初の銀メダルを獲得しました。これは日本選手たちに「自分たちもやれば出来る」という自信を与えてくれた快挙です。

一方、今年の日本ボート界は新型コロナのお蔭で大変な事態に陥っています。なんといっても東京オリンピック・パラリンピックが1年延期となったことは、特に選手諸君にとっては全てそこに焦点を合わせて活動してきただけに大きな衝撃でした。さらに今日まで国内外のあらゆるレガッタが中止に追い込まれています。その中でわれわれとしては、なんとしてもインカレと全日本だけは実施したいと必死の努力を続けているのです。コロナの影響がまだ残るなか、絶対安全・安心な大会運営を目指したく、それが来年のオリンピック開催にもつながると考えて頑張っています。皆さんの一層のご支援・ご協力をお願いします。」

総会では7つの議案が上程・審議され、全て原案どおり議決されました。さらに7つの連絡事項が各委員長から報告され、約2時間で全てが終了です。例年ですとこの後懇親会が開かれ、賑やかなひと時が続くのですが、今年は中止。ちょっと淋しく残念ですが、時節柄やむをえません。

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今年の総会の議案のなかで「役員選任の件」については皆さんに知っておいてもらった方がいいので、簡単に説明しておきましょう。

今年は2年に1度の役員(理事と監事)改選期なので全役員が任期満了となり、新たに選任される年です。しかし東京オリンピック・パラリンピックが延期になったので、その準備と大会運営のためには事情をよく知ったベテランの現役員の方々に続けて役員として残ってもらった方がいいと考えました。その旨お願いした結果、全員が残ってくれることとなったのです。さらに足らざる部分を補うために理事3名、監事1名を新たに選任することとし、その結果、理事28名、監事3名の新体制で新年度のスタートを切ることになりました。

社員総会で「役員選任の件」が承認されるとすぐに臨時理事会を開き、新たな担当職務等を決定しました。会長をわたくし大久保尚武が、理事長を木村新さんが引き続き担当することがまず議決されました(どうぞよろしくお願いします)。そして重任となった23名の理事は全員が現職務を継続(2名だけ兼務を解く)、そして新任理事の職務も決まりました。新任理事・監事を紹介しておきましよう。

氏 名 担当職務 勤務先・ボート歴
さかた とういち
坂田 東一
特命担当 (財)日本宇宙フォーラム理事長
(元 ウクライナ大使、元 文部科学事務次官)
東京大学ボート部
たかはま いちろう
高濱 一朗
パラローイング委員長 パナソニックインフォメーションシステムズ(株)
一橋大学端艇部
なかがわ やすし
中川 康
競技委員長 増田煉瓦(株)
館林高校ボート部
日本大学ボート部
とい ひろし
外井 浩志
監事 外井法律事務所所長 弁護士
東京大学ボート部

ところで皆さん、現在の日本ボート協会の組織とそれを担当するスタッフの体制をご存知でしょうか。ごく簡単に全体像を説明しておきましょう。

まず理事会の下に、5つの本部(管理、強化、競技、普及、パラローイング)があり、その傘下に全部で18の委員会、プラス事務局があります。各委員会は委員長の下に委員とスタッフをかかえて担当業務をこなしています。例えば一番規模の大きな委員会である「審判委員会」の場合、委員長(流石淳子理事)の下に13名の審判委員と27名の審判スタッフがいて、彼らが全国に3,000名といわれる審判団を統括して、各レースの運営にあたっているのです。

なお一部の委員会では委員・スタッフの他に「アドバイザー」(元委員長など有識者、全部で10名)とオフィサー(国体担当とか高体連担当など特別任務担当、合計13名)を有しているところもあり、審判委員会も規模が大きいのでアドバイザー2名、オフィサー2名がおります。

もちろん全員無給のボランティアであり、時には勤務先・家庭に無理をお願いしているケースも多いと思われ、本当に感謝に堪えません。

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日本ボート協会のホームページ(7月27日付)に「令和元年度JOCスポーツ環境専門部会活動報告書に当協会の取り組みが掲載されました」という記事が載りました。わたしの全く知らない活動だったのですが、内容をのぞいてみたところ実に興味深い、わたしが大事だとおもっているすばらしい活動なので皆さんに紹介しておきたいと思います。ちょっとこみいった話なので、わたしなりに整理して順を追って説明します。

  1. 当協会は2019年3月に「環境指針」を策定しました。そもそもはFISAが環境に熱心で、WWF(世界自然保護基金 世界有数の環境NGO)と提携して「Clean Water Partnership」を推進しており、各NFにも環境問題対応を働きかけてきたのです。日本としてもそれに対応して「環境指針」を制定したわけです。
  2. 2019年世界ジュニア選手権を開催するにあたり、ローランドFISA会長から「この際日本でも何か環境活動をぜひ」とサジェスチョンがあり、早速WWFジャパンを訪れ、その指導を受けて「環境大使育成プログラム」(将来のアスリートたる小学生に対する環境指導)をスタートさせました。大田区にある民間の学童保育機関「ベアフット」の30名ほどの小学生を対象とするボートをからませた環境教育です。
  3. 活動内容はまず①ごく身近な(気候変動とか海洋汚染など)環境に関する座学で学びます。(講師は協会事務局の野口紀子さん、本物のアトランタ五輪選手が来てくれたということで大人気だったそうです。)②そして世界ジュニア選手権の見学をして、ペットボトル廃棄量の削減対策や、WWFジャパン ブースにて、海洋プラスチック問題について学びました。FISAのマット・スミス事務局長も顔をみせてくれたそうです。
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  5. 毎年行われている「FISA AWARD」の「2019 FISA Sustainability Awards」に応募したところ思いがけずファイナリストに選ばれ、昨年11月ロンドンでのDINNERに招待され、受賞こそ逸しましたが「非常に興味深い活動だ」と言及された由です。(これには安井大介さん(2020特別委オフィサー)が出席しました)
  6. この活動が今年のJOCの報告書に大きく取り上げられた、ということです。
  7. わたしが安井さん、野口さんにいろいろ聞いて驚いたのは、ボート人脈の凄さです。大田区の学童保育「ベアフット」の責任者、藤井裕輔さんは元慶応ボート部キャプテンで、早稲田時代の野口さんとは同期。WWFジャパンの海洋水産グループに所属し、本件を担当してくれた植松周平さんは沼津東高校、北大のボート部出身。
  8. 最後にわたしの環境問題に対する考え方を簡単に述べておしまいにします。 わたしは会社経営も社会問題解決に積極的に取り組むべきだ、特に「環境問題」は絶対だと思い、社長時代は「環境経営」を旗印に経営に当ってきました。そして2002年からは日本経団連自然保護協議会の会長を10年間務めました。WWFとはその時からの付き合いです。アジアやアフリカの砂漠やジャングルにはよく訪れ、今年初めに念願のガラパゴスにも行ってきました。

そんな訳でボートと水問題には昔から大いなる関心を抱いていて、今回の記事も嬉しく読ませてもらいました。この活動はぜひ今後とも長く続けてください。

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ボートレースを観戦する機会もなく練習も見られないので、この手紙もちょっと理屈っぽい話になってしまってごめんなさい。早くボートにも“日常”が戻ってきてほしいものです。

 

(以上)