公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

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全国のオアズパーソンへの手紙(第90信)

2020年3月3日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

新型コロナウイルス問題が、いよいよボートにも波及してきました。いちばん心配していた韓国でのアジア・オセアニア大陸予選はやはり中止となり、約半月遅れでスイスにて行われることになりました。これなら日本にとって大勢に影響ないと思います。ただ3月に予定していた戸田での強化合宿は中止します。選手諸君はそれぞれの所属チームで最善の練習を積んでください。

その他にもいろいろ予定変更がありますので、現状を簡単にまとめておきます。今後状況次第でさらなる変更もありえますので、十分注意してください。

1.オリンピック・パラリンピックのアジア・オセアニア大陸予選
  1. 4月27~30日 韓国・忠州での予選は中止となりました。
  2. 代替として、5月17~19日 スイス・ルツェルンでの最終オリンピック予選の一部として実施されます。
  3. パラリンピックについては5月8~10日 イタリア・ガヴィラテでの最終パラリンピック予選の一環として開催されます。
2.日本代表選手の選考方法とプロセス
  1. 全て、すでに決めていた方法とプロセスに従って実施します。ただし、状況により今後変更の可能性もあるのでご注意ください。選手だけでなく皆さんの健康を守るため応援は自粛をお願いします。
  2. 3月3日から予定していた戸田での強化合宿は中止します。
3.国内大会、合宿等
  1. 3月8日から予定していたU-23 、U-21、U-19、タレントの戸田での強化合宿は中止します。
  2. 3月20~22日 高校選抜(静岡県天竜)は中止します。
  3. 3月20~22日 中学選抜(福井県美浜)は中止します。
4.国際大会への派遣等
  1. U-19のシドニーインターナショナルレガッタ(3月14~29日 オーストラリア・シドニー)への派遣は中止します。
  2. アジアインドア選手権(3月18~20日 バーレーン)への派遣は中止します。
  3. アジアコースタル選手権/ビーチスプリント2020(6月17~22日 シンガポール)は延期の予定です。
5.会議等
  1. 全国ブロック長会議(3月14日 東京)は延期します。

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日本代表候補選手たちは、今年も長崎県諫早市本明川で2月3日から2週間の強化合宿を行いました。晴れの日本代表となることを目指して選手たちの気合も十分、いい強化練習ができたと報告を受けています。

2月23日(日)には、日本代表選考プロセスのひとつでもある「2000mエルゴメータートライアル」が行なわれました。その結果がホームページに載っているのでみておいてください。

ここではオープンクラスと軽量級それぞれのトップの記録を紹介しておきます。女子オープンの米川選手のタイムは凄いですね。

男子  オープン
    軽量級
荒川 龍太(NTT東日本)
新井 勇太(慶応義塾大)
6′00″0
6′16″5
女子  オープン
    軽量級
米川 志保(トヨタ自動車)
冨田 千愛(福井県スポーツ協会)
6′39″1
7′05″2

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「JOCエリートアカデミー」にボートから初めて入学していた2人が無事卒業することになりました。松田京子さん(福岡県)と青木洋樹君(東京都)です。卒業祝いの昼食会を2月29日(土)に開き、2人からいろいろ話を聞きたいと予定していましたが、これも新型コロナウイルスが心配だということで残念ながら取り止めました。3年間で2人は順調に力をつけ、いろいろな大会で活躍していることは皆さんご存知と思いますが、4月から松田さんは立命館大学、青木君は早稲田大学に進学予定です。エリートアカデミー第一期生として日本を代表する選手に育つよう期待しています。頑張ってください。

「エリートアカデミー」は世界に通用するトップアスリートを育てるため2008年にJOCが設置した組織です。東京都北区西が丘にある味の素トレーニングセンターを生活拠点として、全国から発掘した優れた素質のあるジュニア選手(中学生、高校生)を近くの学校に通学させながら育成指導しようというものです。卓球、レスリング、フェンシング、飛び込みなどの競技では目立った成果を挙げており、日頃目にしない他競技の選手たちの練習ぶり、生活態度を目のあたりにすることが、凄く刺激になるようです。ボートは2017年度に上記2名が初入学し、その後毎年1~2名入学しており、今年も1名入学予定です。専属のコーチも2名つけていて、今後ともジュニア育成のひとつの柱と考えています。 

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先月この欄で、コースタルローイングについていよいよ今年から日本でも正式に取り組みはじめるということを書きました。どんな競技なのかわたしもまだ観たことがないので、先日、岡本悟コースタルローイング委員長に解説してもらいましたので、その概要をここで説明しておきましょう。

「コースタルローイング」という名の通り、静水コースではなく海上で行うボート競技ですが、大きく2種類の競技に分かれます。ひとつは「ビーチローイングスプリント」です。砂浜のスタート地点から約50m走り、ビーチに置いてあるボートにとび乗り、海面約300mの間に設置された3個のブイを転回してまたビーチまで漕ぎ戻ってきて、さらに砂浜を50m走ってゴールインするというものです。砂浜での合計100mのランと海面の往復600mのローイングを組み合わせた競技です。施設が少なくてすむので大会運営が容易で、観客からもコース全体が見渡せるので面白く、「ビーチバレーのボート版」といわれています。

もうひとつが、狭義の「コースタルローイング」です。海上に設置された複数個(5~7個くらい)のブイを転回して着順を競うもので、ヨット競技をイメージすればいいようです。距離は全長で6~8㎞と結構長く、スタートは海上からが原則ですが、ビーチからのこともあるようです。ブイを回る時がかなりエキサイティングな状況になるし、選手にはラフウォーターを漕ぐ技術が求められます。静水コースを必要としないので、ボート新興国にボートを普及させるべく、FISAとARFが推奨しています。

以上2種目ですが、使用するボートは通常のものとは違い、やはり波に強い特殊なもので、現在日本ボート協会として3艇発注していて7月頃には出来てくる予定です。ボートの種類はSolo(シングルスカル)、DoubleSculls、CoxedQuadrupleSculls(あるいはCoxedFour)の3種類です。今までに海外の大会に、日本からは今治市のクルーなどいくつかの社会人クルーが参加しています。また日本の審判団は何回かの国際大会に正式審判として参加しています。

以上のとおりですが、今年日本ではまず「ビーチローイングスプリント」から始めようと計画しています。現在いくつかの市町村などと交渉をはじめています。第1回目をどこでいつ行うかはまだわかりませんが、どうぞ多くの皆さんにチャレンジしていただきたく思います。

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2月27日、監事の和田好史さんが脳血栓で急逝されました。あまりのことに、電話で知らせてくれた木村新理事長と二人、しばらくは言葉もありませんでした。

顧みれば2012年、当協会が公益社団法人になるときに「これからは法律面の強化が必要だ」ということで、和田弁護士に監事を、そして故鈴木仁弁護士に理事をお願いしたのです。二人はたまたま一橋大学ボート部の同期生で、二人とも超多忙のなか、本当に全力で日本ボート界のために力を尽くしてくれました。そのお二人が急にお亡くなりになるとは……。残念であり、無常を感じます。

和田さんには裁定委員会の創設をはじめ、コンプライアンス体制づくりに全面的に係わってもらいました。また近年は「競漕規則改訂プロジェクト」のリーダーとして見事、新規則をまとめ上げてくれました。本当に貴重な方を亡くしました。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

(以上)