公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

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全国のオアズパーソンへの手紙(第84信)

2019年8月2日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

全日本中学選手権競漕大会(第39回)が7月20,21日に長良川国際レガッタコースで開催されました。去年は強烈な猛暑で熱中症の危惧ありということで、決勝レースは中止に追い込まれました。今年は打って変わって寒いくらいの気候で、「熱中症の心配はない」と安心していたのですが、どっこい、自然は簡単には許してくれません。

まず初日は上流地方の集中豪雨による流木でコースブイが流され、急遽500mだけブイを張り直して「500mレース」として実施の已むなきにいたりました。さらに2日目の朝は一寸先も見えない濃霧です。レース開始を2時間も遅らせ、必死のやり繰りで決勝は全て実施できたのは、不幸中の幸いでした。

選手諸君、予定変更の連続で大変でしたが、決勝戦は好レースの連続で最後までベストを尽くしてくれてありがとう。また役員の皆さん、ほんとうにご苦労さまでした。




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全国中学校ボート連盟(会長・中原克己/同志社大OB)は高体連とは違って、学校会員の他に地域クラブ会員を正会員として構成されています。現在学校会員が26校(18県)、地域クラブ会員が44団体(29県)となっていて、地域クラブ会員が3分の2を占めるまでになっています。

今回長良川の中学選手権会場でそのあたりの現状を聞こうと思い、3人の指導者の方のお話を伺いました。浜松市入野中学校/鈴木政晴先生、和歌山ローイングクラブ/堅田哲也監督、米子漕艇クラブ/杉村正男監督のお三方です。

皆さんのお話、またその他の資料などから浮かび上がってくる中学生のボートの現状をちょっとまとめてみます。

まず、個々の中学校でクラブ活動としてボート部を運営してくのは、本当に大変な事業になっているようです(学校会員がクラブ会員より少ない26校という事実にわたしは衝撃を受けました)。なんといっても指導者の先生の継続的確保です。定期人事異動がある中で後任の先生をどう捜すか、全ての中学校に共通した悩みといいます。また“働き方改革”のなかで、クラブ活動指導に時間を割くのは大変だ、というのが正直な現状のようです。外部の専門家にお願いするのもいろいろ問題があって……ということです。

一方、地域クラブが設立された経緯にはいくつかのケースがあるようです。ひとつは国体開催に向けて(県など自治体が主体になって)若手タレント発掘・育成のためにクラブを設立したというケースです。それが良き指導者を得て、国体後も地域クラブとしての存在を維持し、地域クラブとして大きく育ったという例がいくつかあるようです。また官の助けを借りずに地域住民・父兄の青少年育成に向けたボランティア活動がスタートとなったもの、あるいは先覚的な指導者のイニシアティブでできたクラブなどいろいろあります。

ただ、いずれもが超熱心な指導者の存在が不可欠なのは間違いありません。今回お会いした3人の方々の活動ぶりを聞くと、本当に頭の下がる思いです。

日本のボートの将来を考えると、ジュニアクラスの発掘・育成をどうするか、ボートに親しむ環境をどう作るかが最大のポイントになるとわたしは信じています。

まずは現状をしっかり知り、難しい環境の中で頑張ってくれている人たちの声をじかに聞いて、新しい体制づくりに取り組んでいきたいと考えています。

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今年の世界選手権の第一弾、「U23世界選手権」が7月24~28日の5日間、アメリカ・サラソタで開催されました。23歳未満ということは、いわば世界大学選手権というのに近く、これまで日本はメダルを取ったこともあり、どちらかというと得意にしている大会です。

今年はオープンに3種目(M1x、M2x、W2-)軽量級に3種目(LM1x、LW1x、LW2x)の9選手を派遣しました。うち8人が大学生です。最終成績はA決勝には1クルーも残れず、B決勝に3クルーが残るという結果でした(M1x12位/24クルー中、W2-8位/14クルー中、LW2x9位/10クルー中)。目を引くのがオープン種目で2種目がB決勝に残ったことです。オープン種目でも立派に世界と戦える可能性を示してくれたと思います。全選手この経験をしっかり活かして、場合によっては来年の東京オリンピックにだってチャンスがあるかもしれません。さらなる研鑽・成長を大いに期待します。

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7月13,14日、大阪府立漕艇センター(通称浜寺コース)で開催された2019年度関西選手権競漕大会に行ってきました。わたしは2004年まで関西ボート連盟の会長をしていたので、この大会にはもちろん毎年主催者として来ていました。しかし退任後は一度も顔を出したことはなく、考えてみると何と15年ぶりの観戦です。

わたしが会長時代は、この大会はほとんど琵琶湖で開催されていたので、この浜寺コースに移ってちょっと雰囲気も変わったと感じました。例えばエイトの常連だった東レ滋賀クルーが参加していないなど、「アレッ」という感じです(ちなみに、わたしが積水化学に入社した1962年のこの大会のエイト優勝は「積水化学」です。そんな時代があったのです)。近年関西の大学クルーの進境は著しく、全日本選手権でもいくつかの種目で優勝カップを持っていきます。この大会でも各クルーの充実ぶりは十分に伺えて、9月の全日本大学選手権で関西勢がどう戦うか、「楽しみだナ」と思いながら観戦しました。

閉会式では、芦田文雄競漕委員長の強い要請で(ちょっと場違いかなと思いつつ)「いよいよ東京オリンピックまであと1年です。日本ボート一層の強化のために、関西の選手諸君の奮闘を大いに期待します」と一言ご挨拶をさせてもらいました。楽しい一日でした。

(以上)