公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA OFFICE

全国のオアズパーソンへの手紙(第80信)

2019年4月2日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

世界ボートジュニア選手権(8月7日~11日)まであと4ヵ月と迫ってきました。なにしろ2020東京オリンピック・パラリンピックのテストイベントとしての大会です。オリンピックとほぼ同じ規模(60カ国、選手600人位)の国際大会なので、準備しチェックしておかなければならないことが山ほどあり、各担当者も緊張感が増してきたように見えます。

組織委員会からは仮設プレハブの前倒し建設や競技備品の前倒し購入など、かなり限定的な現物支給しか受けられないという思いがけない事態になりましたが、われわれとしてはしっかり成功させて東京オリンピック・パラリンピックに向けて準備に万全を期す覚悟です。

いうまでもなく、新設の「海の森水上競技場」で開催する最初の大会だという点が、最大のポイントです。世界有数の第一級のボートコースだ、という自信は持っていますが、出来てみて使ってみなくては分からないことがたくさんあるのは当然です(しかも8月時点では仮設プレハブに上下水道、電気などが未接続になることが最近判明しました)。皆さんが心配している風の問題とか暑さ対策、そしてコースのある島へ通じる道路が2本しかないので、選手・役員や観客の輸送対策もしっかり計画しておかなければなりません(最寄りの駅からはバスで12~13分ほどの近さです)。

3月19日(火)、この世界ボートジュニア選手権開催に関して記者発表を行いました。主催者としてはFISAのマット・スミス事務総長が挨拶し、細淵匡邦2020特別委員長が詳細説明、そして日本代表選手16名(男女各8名)を発表した後、選手を代表して島田隼輔選手(瀬田工業高校)が決意表明を行い、記者からの質問にもしっかり答えていました。

このジュニア(U19)日本代表選手を決める選考会は3月11日~13日の3日間、戸田ボートコースで開催されました。これまでの強化合宿で絞り込まれてきた男女各18名の日本代表候補選手が3日間のシングルスカルでの選考レースにチャレンジしたわけです。そのタイム結果等を勘案して、強化委員会として世界ボートジュニア選手権への参加種目を男女共4x、2x、1xの3種目(計6種目)と決め、代表選手として男女各8名(補漕各1名を含む)を選考し、理事会で正式決定したわけです。代表選手の氏名はホームページで見ていただきたいのですが、高校1年生が3人選ばれたこと、JOCエリートアカデミーに所属している4人が全員選ばれたこと、この2点がわたしには「オッ」と思う新鮮な驚きでした。「タレント発掘、ジュニア育成が順調に進んでいる」と思われたからです。選手諸君、日本で開かれる初の「世界ボートジュニア選手権」です。悔いのないレースを戦えるよう、残り4ヵ月しっかり練習を積んでください。「がんばれ!ジュニア日本代表選手!」

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この3月、FISAから3組の幹部の方々が来日しました。

まず「IF VISIT」です。オリンピック・パラリンピックの各競技はそれぞれのIF(インターナショナル・フェデレーション、ボートの場合はFISA)が主催・運営するのですが、そのIFが準備状況をチェックし、また開催国側と種々打合せを行うために定期的に来日するものです。特にボートの場合はボートコースを新設するので、その建設状況の視察がポイントになります。今回はこのコースについて最も詳しいスベトラさん以下4人のメンバーが海の森水上競技場を視察し、艇庫のアームについてとか消波装置についてなど、いくつかの改善点を指摘されたようです。また日本サイド(主体は組織委員会と東京都、部分的にJARA)との会議では、大会運営(テストイベントとしての世界ボートジュニア選手権も含めて)について、具体的な協議・打合せが行われました。

2つめはFISA審判部長のパトリック・ロンバウトさんが「NTO研修」のために来日しました。オリンピック・パラリンピックの実際の競技運営実務はFISAの「ITO(インターナショナル・テクニカル・オフィサー)」メンバーが担当するのですが、彼らだけでは不可能で、当然開催国の「NTO(ナショナル・テクニカル・オフィサー)」も加わり、一緒になって競技運営に当るわけです。その「NTO」メンバーの研修がおこなわれたわけで、今回は32名(日本人27名、海外から5名)の内の半数ほどが受講しました。27名の日本人メンバーは流石淳子審判委員長以下、全員国際審判員も含めた審判の面々で(どの国の場合も同じだそうです)、あらためてレガッタの競技運営実務は審判が中心になるのだということを再確認しました。なお、この「NTO」メンバーは、8月の世界ジュニア選手権から活動を始めます。

そして3番目のFISA事務総長のマット・スミスさんは、18日に来日、1泊して19日には離日という強行軍です。まず海の森水上競技場を視察、次いで東京都、スポーツ庁、組織委員会を歴訪して、各幹部と会議、席上オリンピック(並びにそのテストイベントとしての世界ボートジュニア選手権)についてのFISAの考え方を再強調するとともに、強力な支援を要請したようです。忙しい事務総長があえてこの時期に強行軍で来日したことの裏には、「オリンピック・パラリンピックを成功させるためには、ここが踏ん張り所だ!」という彼の強い思いを感じます。わたしは19日の昼食をご一緒しましたが、ことばの端々に「FISAも全力で支援するから、JARAも頑張ってくれ!」というマット・スミスさんの熱意を感じました。

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3月15日(金)定例理事会を岸記念体育館で開きました。審議事項7件、報告事項の7件の計14件が議題で、どれも重要なのですが、ここでは「2019年度事業計画」と「予算案」についてみなさんにご報告しておきます。

事業計画としては、次の3事業が最重要事業としてあげられています。

  1. 「海の森水上競技場」の完成と、6月に予定している「完成記念レガッタ」の開催
  2. 8月の「2019世界ジュニア選手権大会」の開催
  3. 「2020東京オリンピック・パラリンピック」の出場権獲得
    (8月末・世界選手権 オーストリア)

この3事業はそれぞれ大事業なので、担当委員の方々は文字通り大忙しです。ボランティアなどでみなさんにご協力をお願いすることもあるかと思いますが、よろしく頼みます。

このほかでお知らせしておきたいのは次の2点です。

  1. 日本ボート協会主催の大会を2つ減らして、全部で10にします。「全日本軽量級選手権」と「全日本ジュニア選手権」を止めますが、軽量級の一部種目は「全日本選手権」の中に統合します。全日本ジュニアはジュニアの日本代表選考時期が変更となったことと開催地の都合で中断することにしました。
  2. 5月末に事務局が移転します。新事務所は神宮球場の目の前に新築中の「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」の6階で、野球を上から観戦できるそうです。初代の日本ボート協会会長の岸清一さんの名前が冠された「岸記念体育館」がなくなるのは残念ですが、前の東京オリンピックの時に建てられたものですから、老朽化で仕方ありません。

次に予算(案)についてです。これまで協会の予算についてあまり話したことがありませんでしたが、今年はちょっと特別なのでポイントを絞ってできるだけ分かりやすく書いてみます。(数値は全て概算で書きます)

  1. まず今年は総予算が初めて10億円を超えます。これは世界ジュニア選手権の開催費用に5億5千万円計上したためですが、通常予算だけでみると4億6千万円で前年比56百万円の増加となっています。
  2. ただ収入は8億9千万円しかないので、1億1千万円の赤字予算です。不足分は借金というわけにはいかないので、下記の引当金等の充当でまかないます。
    特定引当預金 充当
    45百万円
    強化募金・世界ジュニア寄付 充当
    58百万円
  3. 現在、日本ボート協会の財産状況は次の通りで、この中から上記を引き落とすことになります。

    基本財産(除く土地)及び特別引当預金
    1億24百万円
    強化募金及び世界ジュニア募金
    79百万円
  4. 10億円の支出をカテゴリー別に分けると次の通りです。

    一般事業活動費
    1億2千万円
    (強化と2020特別を除く14の委員会分)
    本部経費・管理費
    8千万円
    2020特別委員会
    5億5千万円
    (世界ボートジュニア及び2020本大会)
    強化委員会全般
    2億6千万円
    (タレント発掘・育成
    1億4千万円)
    (強化
    1億2千万円)

    世界ボートジュニア選手権の開催にいかにお金がかかるか、また、強化(特にタレント発掘・育成)に相当の予算を充当していることが分かります。

  5. 以上の通りです。そしてここであらためて申し上げるのもなんですが、全国のオアズパーソンの皆さん、金額の多寡はもちろん問いません。貴重な浄財の寄付を、よろしくお願いします。

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3月22日(金)~24日(日)の3日間、戸田ボートコースでシニアとU23の日本代表候補の最終選考会が開かれました。昨年11月以降、何回かの強化合宿、そしてタイムトライアルなどを経て絞り込まれた選りすぐりの精鋭67名(男子39名、女子28名)が参戦し、日本代表候補の座を目指して厳しく競い合いました。わたしは23日、24日の両日じっくり観戦しました。ちょっと風は強めでしたが、さすがに見ごたえのある熱戦続きで観戦者としては堪能しました。

このレースの結果、並びにIDT%(アイデアル・タイム到達度)を勘案して、まず強化委員会として案を練り上げ、その案を3月26日(火)の選考委員会にかけました。慎重審議の末に選考委員会案を決議、それを理事会(持ち回り)で承認し、シニアは15名(男子9名、女子6名)、U23が9名(男子4名、女子5名)と合計24名の日本代表候補選手を最終決定しました。日本代表候補選手諸君の健闘を心から祈念します。

なお、残念ながら今回の選に洩れた43名の選手諸君に申し上げます。諸君は間違いなく日本ボート界の精鋭であり、明日の日本代表です。新たな目標をしっかりと胸に込めて、次の一歩を踏み出してください。わたしたちは皆さんを支援し、見守りつづけることを約束します。

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この最終選考会と日程が全く重なってしまった為、「全国高等学校選抜ボート大会」(浜松市天童天竜ボート場)には行けませんでした。毎年顔を出していたし、まして今年は「第30回」の記念大会なだけに、まことに残念でした。木村新理事長他の幹部が行ってくれて盛会だった様子を聞き、喜んでいます。

将来の日本ボート界を背負う選手が、必ずや今回の出場選手に含まれています。今後の健闘を祈ります。

(以上)