公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

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全国のオアズパーソンへの手紙(第76信)

2018年12月4日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

11月24(土)「第13回Head of ARA」が開催されました。種目はエイトからシングルスカルまで、年齢的にもU23から70歳代のシニアまで、全部で204クルーがエントリーして今年も荒川は賑やかだったようです(わたしは残念ながら行けませんでした)。

このレースは、強化委員会が2019年の日本代表選手選考の一環として位置づけているので、日本代表を目指すシニアとU23の選手たちが「強化カテゴリー」として多数参加しました。エルゴの参加基準タイムをクリアーしてチャレンジしてきた選手は男子88名、女子41名、合計129名です。詳細は次の通りです。

    シニア U-23 合計
M1x オープン 16人 5人 21人
軽量級 44 23 67
W1x オープン 6人 8人 14人
軽量級 11 16 27

このレース結果と12月初旬に行う「2,000mエルゴ」の結果とを総合勘案して代表候補選手が選ばれ、12月10日(月)からの強化合宿に参加することになります。

 来年8月にオーストリア・リンツで開催される世界選手権がオリンピック参加枠獲得の最初のレースになります。それに向けて、選手諸君の冬場の練習に期待します。

わたしの座右の銘としている小泉信三先生のことば

   「練習は不可能を可能にする」

を信じて頑張って下さい。

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11月7日(水)「JOC(日本オリンピック委員会)加盟団体会長会議」が開催され、出席してきました。JOCには55のスポーツ団体が加盟していますが、会長が一堂に会するのは初めてだそうです。

会議の目的は、このところスポーツ界で頻発している不祥事に鑑み、「スポーツ界のガバナンスの確立とコンプライアンス違反の防止」を徹底するために、皆で話し合おうというものです。

竹田恒和JOC会長の趣旨説明、鈴木大地スポーツ庁長官の現状に対する危機意識に満ちた発言などに続いて、今年問題を起こした10団体のうち5団体から事件の内容と今後の対策についてそれぞれ説明がありました。(サッカー協会、スキー連盟、ボクシング連盟、レスリング協会、カヌー連盟)

議論のポイントとなったのは、スポーツ庁が策定しようとしている「スポーツ団体ガバナンスコード」についてです。これは経済界で行われている上場企業が守るべき行動規範「コーポレート・ガバナンス・コード」(企業統治方針)」に倣ったものです。このようなものを作らなければならない程、今のスポーツ界は乱れていると社会一般は見ているようです。ですからこうした行動規範を作るのはいいでしょう。ただ、その実行状況をスポーツ界が自主的に責任を持ってチェックしていくのか、あるいは国(具体的にはスポーツ庁など)が前面に出てチェックするのか、ここが意見の分かれるところでした。

この場では結論は出ませんでしたが、12月1日付の新聞によると超党派の国会議員による「スポーツ議員連盟」が提言を出し、新しく「円卓会議」を結成して、そこがガバナンスコードの順守状況を審査すべきだ、との案を出したようです。「スポーツ政策推進に関する円卓会議」(仮称)には、スポーツ界(JOCなど)国側(スポーツ庁など)の双方から複数の代表が入るという折衷案ですが、まぁ妥当なところかと思います。

さて、われわれボート界についてですが、過去の苦い経験を踏まえて、現在不祥事防止のためのガバナンス体制はきっちり整っていると思います。「コンプライアンス規程」「アンチドーピング規程」「内部通報制度」「裁定委員会制度」そして「倫理ガイド」も制定しています。とはいえ、制度が整っていれば心配ないのか、といえばそうはいかないのがこの問題の難しいところです。

「仏つくって魂入れず」こうなるのが一番怖いのです。われわれには、伝統的に「オアズパーソンシップ」が受け継がれています。この精神を忘れさえしなければ何の問題もありません。そして、できれば(わたしも今回読み返しましたが)「倫理ガイド」を今一度読んでおいて下さい。ホームページに載っています。

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11月29日(木)JBC(日本ボートマンクラブ)の2018年「JBC会員の集い」が開かれ、わたしも会員として出席してきました。この会の皆さんは、今や日本ボート界のOB、OGのいわば長老格として、陰に陽に各出身団体のバックアップをしていただいています。それだけでなく、福田紘史代表の挨拶にもありましたが、「単に親睦を深めるだけでなく、日本ボート界の発展にも貢献できる活動をしていきたい」ということで、特に今年は例の戸田コースの水藻発生問題については、本質的解決に向けて多大なご助力をいただきました。

また、席上、「強化募金寄附」を今年も頂戴しました

本当にありがとうございます。

挨拶をということで、日本ボート協会の最近の活動を3点お話しました。

一つ目は、「オリンピック出場権」の獲得が、2019年度の最大の目標で、冬場の練習が勝負なので選手達は今必死で練習していることの紹介。

二つ目には来年6月に懸案の「海の森水上競技場」が完成するので、「記念オープニングレガッタ」を開催し、小学生からシニアまで幅広いオアズパーソンに漕いでもらうことを計画しているので、ぜひ参加してほしいということ。

三つ目は、日本ボート協会として「ポスト百周年 新ビジョン」の作成に取り組み始めたこと。松元崇理事をヘッドにプロジェクトチームを編成、2020年以降どのようなボート界を目指していくか、夢のあるビジョンをつくりたいので、よろしくご協力いただきたいということ。

この会は、とにかく古くからの艇友ばかりなので、話が尽きません。福田代表の話だと、関西にも同様の「関西ボートマン倶楽部」があり、毎年100人以上が集まっているそうです。一度参加してみたいなと思ったことです。

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鎧塚一さん(早大OB、11月25日ご逝去(享年94))が亡くなられました。お歳ですから仕方ないとはいえ、残念でなりません。

鎧塚さんといえば、なんといっても「全国ボート場所在市町村協議会」です。ボートの普及・発展のためにはボート場所在地の首長さんと議会議長さんに、「まずはボートを好きになってもらい、ボートの味方になってもらうのだ」という発想は半端じゃありません。「天才的発想」だとわたしは常々言ってきました。

現在、32市町村が参加し、年に一回首長会議(ボートサミット)、議会議長会議、そしてレガッタを行っていますが、スポーツのために首長、議長が集まる例はボート以外他のスポーツで聞いたこともありません。もちろん、まずは各首長さん、議長さんの熱意に深く感謝しなければならないのですが、これを創設した鎧塚さんの存在はほんとうに大きかったと思います。

わたしは11月20日(火)にお見舞いに行き、最後の握手をしてきましたが、その5日後に亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

もうお一人、市原厚さん(京大OB、10月23日ご逝去(享年83))のご逝去も残念です。毎年市原さんが作られた「琵琶湖周航の歌」のカレンダーを愛用していたオアズパーソンは多いと思います。

この歌は6番まであるので、カレンダーにぴったり。毎年川那辺雅子さんの「きり絵」で、歌の文字は市原さんです。上手な字ですね。製作から発送業務まで「毎年、市原ひとりでやっていました。ほんとうに好きだったのですね」と弔問に伺った時、奥様がおっしゃっていました。

昨年、日本経済新聞の最終ページ文化欄に、『琵琶湖周航の歌100年』と題する市原さんが書いた大きな記事が載ったのを覚えている方も多いでしょう。記事が載った時、電話のやりとりで嬉しそうだった市原さんの声が忘れられません。

以上