公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA OFFICE

全国のオアズパーソンへの手紙(第68信)

2018年4月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

3月26日(月)海の森水上競技場の建設状況の視察に行ってきました。来年3月の完工予定まで残すところ1年、案内してくれた東京都の担当の方の説明では「現状、4割程度の進捗でしょうか」ということです。

FISAからはスベトラさん達3人(女性ばかり)が進捗チェックに来ています。木村理事長、細淵理事(FISAの理事を兼務)そして組織委員会へ出向している中島大祐さんも一緒でした。

青海桟橋から船で10分程の近さです。今は陸上での工事が中心で、ゴール付近の地盤・基礎の整備の真っ最中。ここに本部、艇庫、観覧席などが建つのですが、まだ建物工事は始まっていません。コース沿いにスタートからゴールまで続く幅6mの伴走路は、ほぼ完成です。また驚いたのは600m付近に新しく架ける橋の建設です。現在コース南側の陸上で製造・組立中でしたが、なんと長さ240m、重さ7,000トンという巨大なものです。これを水中には橋脚なしで、クレーンで吊り下げて据えつけるそうで、8月に工事する時には見に来たいと思いました。

一番心配している風のことですが、この日は風速2m程の弱い風で、海上では少々波立っていましたが、コース内に入ると全く静かでした。もっと強い風の時にはどんな様子か、今後とも調査を続けていきます。

完成時には、南からの風対策として、700mから1,150m迄の450mの間に(この間土手が切れて風が通るので)「風防林」を植えることにしています。

ともかく、日本初の本格的国際レベルのボートコースが着々と出来上がりつつあります。立派に仕上げるため、我々も当局と密接に連携しながら万全を尽くす所存です。

海の森

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いよいよボートシーズン幕開けです。

3月23日(金)から3日間、静岡県浜松市天竜ボート場で開かれた第29回全国高校選抜ボート大会に行ってきました。去年は右脚を痛めていて来られなかったので、2年振りです。

昨秋行われた全国9ブロックの予選を勝ち抜いた144クルー、384名の選手達は、好コンディションの中元気いっぱいの漕ぎっぷりで、わたしも楽しんで観戦しました。

ジュニア(U-19)諸君の漕力レベルも、特にトップクラスの選手ではかなり進歩が見られます。昨年の「U19世界選手権」への派遣基準を「世界で戦えるレベル」に厳しくしたことも、ジュニアボート界にとっては衝撃でしたでしょうが、一方で強化に向けたモチベーションにもなったのではないかと思います。

わたしから特に申し上げておきたいのは、来年8月、新設の「海の森水上競技場」で「U19世界選手権」を開くことです。オリンピックと同じ、男女7種目ずつ全14種目で戦われ、世界中から50ヵ国以上が参加すると思います。開催国日本としてはできるだけ多くの種目に参加し、相応の成績を残さなくてはなりません。

そのために、今年は特に重要な1年になります。大会としては、まず国内で4月の「全日本ジュニア選手権」(斑蛇口湖)7月末の「全日本高校選手権」(愛知池)の2つ、そして国際レースが6月の「アジアジュニア選手権」(韓国)8月の「U19世界選手権」(チェコ)と続きます。

日本のジュニアももう一段強くならなければなりません。それぞれ目標をしっかり定め、体力・漕力の強化に努めてください。ギザビエ方式を参考に「正しい練習の継続」、これしか強くなる途はないのです。

ちょっと厳しい話になりましたので話題を変えます。天竜では、大会2日目の24日(土)の夜、大会関係役員の皆さんと懇談しました。静岡県ボート協会会長の池谷邦行さん、副会長の米澤茂樹さん等の他に浜松市議会議長の渥美誠さんも同席してくださいました。渥美さんは、30年前のこの天竜ボートコース開設の時から様々の面でご尽力くださった方で、今回はその当時の話をいろいろ聞かせていただき、随分勉強になりました。こういう方々が日本のボートをしっかり下支えしてくださっているのだと、改めて認識しました。

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この高校選抜の話題とも関係があるのですが、「タレント発掘・育成」活動について少しお話しておきましょう。

日本ボート協会では有望な若手選手を発掘・育成するため2014年に「タレント発掘委員会」を設けました。現在委員長は長畑強化委員長が兼務し、委員として「プロジェクトマネージャー」を務める森山修さん(福井県美浜町)が中心になり活発に活動を続けています。この4年間で約6,000人の挑戦者(半分が高校生、あと中学生、大学生、社会人もいる)を対象に発掘活動(トライアウト)を行い現時点で20名を「タレント育成選手」に認定して育成プログラムにのせて育てています。

また別途JOCが行っている「JOCエリートアカデミー」にも昨年から2名を送り込み(今年更に2名を加盟させて合計4名)他競技のエリート選手と共同生活を経験してもらうこともしています。

育成活動として海外でのレース経験を積ませることも積極的に行っています。その一環として、この3月19日~25日の間、オーストラリアで開催された「2018シドニー国際ボート大会」にタレント育成選手5名、エリートアカデミー生2名の計7名を派遣しました。

この大会はオーストラリアでも有数の大会なのですが、年令2歳きざみで、U17、19、21、23と細かく区分けされているようです。(これはドイツやデンマークでも同様)今回の日本からの派遣選手はタレント発掘の1期生が多かったようですが、U21のW4×で2位、U19のM1×4位、M2×4位とまずは着実に育っていると言ってよいでしょう。

タレント発掘委員会では、いくつかの点で制度の更なる強化方法の充実を図るべく改訂した運営方針を発表しています。いずれそれについてもお話したいと思います。

シドニー

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3月28日(水)、2018年度の日本代表候補選手が発表になりました。シニア19名(男子軽量級9、オープン4、女子軽量級5、オープン1)U-23 16名(男子軽量級5、オープン2、女子軽量級5、オープン4)です。

3月15日(木)に戸田で最終選考レースの予選会が行われ、わたしは午前の部を観戦しました。ほとんど無風の好コンディションの中、20秒ごとにスタートしていく選手達の漕ぎをじっくり観ることができました。日本としての勝負所は、まずは来年の世界選手権でできるだけ多くのオリンピック参加枠を取ることです。それに向かっての大事な今年1年、「頑張ってくれよ」と見ていて祈るような気持ちになります。

ここを勝ち抜いた選手達は、3月24日(土)25日(日)の斑蛇口湖での最終選考レースに臨んだわけです。両日とも相当強い逆風が巻く感じで、選手は苦労したようです。ある意味逃げ場がなく、ナマの力が出たと言えるかもしれません。最終の500mでたたき合い競り合う形が多く見られるようになってきたようです。一方で、1~2名飛び抜けた力を示す選手も出たようです。またタイムを見る限り、U23の女子が力をつけシニアを追い上げているようにも感じます。

選ばれた代表候補選手の一層の精進・健闘を期待するとともに、残念ながら選ばれなかった選手諸君、まだまだこれからです。歯を食いしばってオリンピックを目指して力をつけることです。

絶対に諦めずに頑張ってください。

班蛇口湖

以上