公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第46信)

2016年6月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

LM4-のオリンピック出場は、残念ながらかないませんでした。5月24日、スイス・ルツェルンで行われたオリンピック最終予選には11ヵ国が挑戦し、ロシアとドイツの2ヵ国が参加権を獲得し、日本クルーは5位で涙をのんだのです。前哨戦ともいうべき4月のワールドカップⅠで勝てなかったドイツとスペインには、今回もやられました。ただ間違いなく手の届くところにきており、4位のスペインとは0秒68の差でした。若い日本代表クルー(荒川龍太、奈良和紀、小林雅人、佐藤翔)は確実に力をつけてきています。ぜひこの経験を今後の世界選手権さらには東京2020に活かしてくれることを期待します。

結局日本のオリンピック参加は、LM2×とLW2×の2クルーとなりました。残るところ2ヵ月、リオデジャネイロでの大いなる健闘を期待してみんなで応援しましょう。

ところで、オリンピック参加枠獲得までのプロセスを説明しておきます。(軽量級3種目についてのみ)

まず、リオ五輪への参加クルー数は、LM2×とLW2×が20クルー、LM4-が13クルーです。これに対して、まず昨年8月の世界選手権(仏・エギュベレット)で各種目11ヵ国が、参加枠を得ました。(日本は残念ながらここでは参加枠を得られませんでした)

残りについて、LM2×とLW2×は各地で行われる大陸予選で、

LM4-は今回スイスでの世界最終予選で決められたわけです。

大陸予選の振り分けは、男女とも

「アジア3、アフリカ1、ラテンアメリカ3、ヨーロッパ2」

となっており、合計9クルーが、ユニバーサリティ(国際普及)の観点から、各大陸に割り振られているのです。

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日本ボート協会のホームページが、面目を一新しましたね。

まずなんといっても画面がきれいですごく見栄えがしますし、内容が充実しました。取り上げるニュースも、「日本代表ニュース」「Event Report」それに「広報」とバランスがとれていて、ニュースにスピード感もあり、写真もいい。

今載っている「Event Report」は4つですが、どれも興味を惹かれます。なかでも「第125回大阪市立大ボート祭」には驚きました。わたしは長年大阪に住み、関西ボート連盟会長まで務めてきたのに、このボート祭は知りませんでした。ダメですね。五代友厚が1890年に始めたというのですから、凄い歴史です。

このホームページは記事がどんどん繋がっていって、いろんなひとのフェイスブックに迄も繋がるので、読み出したら、1時間くらいアッという間にたってしまいます。

協会の広報委員会がずいぶん頑張ってくれて、感謝です。次の課題は機関誌「ローイング」をどう変革するかですね。大いに期待しています。

先日、稲門艇友会の谷古善昭さんから、オランダボート協会の機関誌を見せてもらいました。オランダ語なのでまったく読めないのですが、谷古さんの説明を聞くと、ニュース誌というよりは、オランダボート協会の活動報告誌兼研究誌のように感じました。協会及び各地クラブの活動報告の他に、いろいろな調査研究、意見なども載せているようです。

研究してみてください。

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この度「倫理ガイドライン」をまとめ、ホームページで発信しました。中学生にも理解できるように、という趣旨で、わかりやすい文章にまとまっていると思います。ぜひ読んで、これからの活動の指針にして下さい。

このガイドラインを発表することにした背景は、あらためて申し上げるまでもないと思います。

ボートを漕ぐ選手、指導者、そしてOB,OGは、最も高いレベルの倫理観(人の踏み行うべき道についての信念)の持ち主であってほしいのです。そうした、ボートの世界で昔から「オアズマンシップ」と呼ばれてきた健全な精神は、日々のしっかりした生活指導、そして何より、厳しいなかにも心のこもった練習指導を通じて育てられていくものです。ボートというすばらしい伝統をもつスポーツの価値をしっかり守るために、ボート関係者全員の心をひとつにして努力しましょう。

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5月9日(月)ARF(アジアボート連盟)の王石会長とツァン・イン事務局長(女性)がお見えになりました。木村理事長、細淵雅邦総務オフィサー、日浦幹夫医科学委員と一緒にお会いし、アジアのボート界のこれからについてとか、FISAのオリンピック改革案についてなど1時間ほどいろいろ意見交換をしました。

その後、昼食を食べながらの話で、中国のボート界の内実をいろいろお聴きしましたが、これには正直びっくり仰天してしまいました。いくつかお話しておきます。

まず、「中国のボート人口はどのくらいですか」と訊くと、「40人です」という答えです。一瞬、何のことか分かりませんでしたがつまり、中国には国民スポーツとしてのボートはまだなくて、オリンピックや世界選手権に出てくる選手は、みんな特別に訓練・育成された「国家選手」だというのです。

大学や民間企業にはほとんどボート部はないようです。

ただ、王さんの会社(「万科企業」という巨大デベロッパー)では、艇も持ち、ボートを奨励していて、今回も「埼玉・戸田マスターズ」に自社クルーで参加したのです。ご自分も整調を漕いだそうです。王さんは以前、イギリス・ケンブリッジ大学に留学して、そこでボートを知り、ボートの良さに惚れ込んで、帰国後、自社内にボート部をつくったとう経緯のようです。

また中国のスポーツ協会の会長に民間人で就いているのは、ボート協会の王会長だけだというのにも驚きました。他の競技団体の会長は、すべて国が派遣する国家公務員(原則たぶん共産党員)で、事務局長のツァンさんも原籍は中国オリンピック委員会にあり、そこからの出向なのです。

王さんは「中国の大学でボートを盛んにしたい、ぜひ支援してほしい」とおっしゃいますが、正直どうすればいいのか対応に窮します。

以上