公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第32信)

2015年4月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

水温む4月、いよいよボートシーズン到来です。

各地で、伝統の学校対抗戦が目白押し。選手諸君は冬季練習の成果を存分に発揮して、母校の名誉のために大いに健斗して下さい。

4月はボート部に新人を迎え入れる時です。近年入部者の減少に各大学とも悩んでいるようです。しかしいろいろ工夫して、毎年20人以上の新部員を獲得している学校もあり、その大学はやはり好成績をおさめているようです。なんといっても、「まず、ボート部員を増やす」これがスタートですね。

そして今年は、戸田で「新人歓迎試乗会」を4月に3回行い、その日は一定時間コースを新人のためにあけることにしているようで、いい試みだと思います。

日本ボート協会の強化委員会でもトライアウトという形で、特に他競技経験者からの優秀な人材発掘をしようとしています。各地のエルゴ大会時にトライアウトを開催し、なんと500名を越えるチャレンジャーが来てくれたのは驚きでしたが、この中から有望な23名の人たちを、3月16日、17日にJISS(国立スポーツ科学センター)に集まってもらい、第2次の測定を行いました。結果8名の諸君が第3次選考に進むことになりました。優れた素質のアスリートが、きっと発掘されて活躍するに違いないと、大いに期待しています。

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FISA(世界ボート連盟)ホームページに、2020年東京オリンピックにおけるボート競技会場が海の森水上競技場に決定したことが発表されました。2月末にブラジルで開催されたIOC(国際オリンピック委員会)理事会での決定・告知に基づく発表です。

日本ボート協会としても、早速3月5日(木)にその内容をホームページに掲載しましたので、ぜひ一読しておいてください。特にジャン・クリストフ・ローランドFISA会長、並びにジョン・コーツIOC東京五輪調整委員長、このお二人のコメントがたいそう心のこもったもので、わたしは嬉しく読みました。

東京湾の海の森の海域にボートコースを造るという、かなり思い切った発想は、東京都が前回2016年オリンピックに立候補した2006~2007年頃に生まれたものです。戸田コースではダメだという以上、どこかに新設しなければならない。どこにするか、東京都、FISA、JARAの三者で多くの候補地をあげて検討を重ねた末に生まれた案なのです。

オリンピックを開催するボートコースは、巨大な施設です。単に静水の水面(コース)があればいいというものではなくて、回漕水路、艇庫・陸上トレーニング施設、観客席などはもちろん特にテレビ映像撮影のための車輛走行路も必須です。そうした諸条件を満たしうる候補地の中から、

  1. ボートコースとして的確性
  2. 実現可能性(関係者の合意など)
  3. 予算

の三つを総合的に勘案して、候補地を絞っていき、その結果最終的に「海の森コース」に決めたのです。

一部のみなさんが最後まで拘った「彩湖」も、もちろん候補にあがりましたが、国土交通省が「彩湖は荒川流域で唯一の洪水等有事のための遊水池であり、恒久施設を建設することは絶対に不可」として、国としては認可する可能性はほとんどゼロでした。まず出発点での実現可能性が得られない以上、いかにその他の条件が望ましくても候補地として残す事はできません。この事実を、どうかご理解ください。

わたしは常々、戸田コースのあまりの混雑ぶりに、強い危惧を抱いていました。大事故がいつ起きるか、恐ろしい限りです。また戸田競艇との共存で、2000mを漕げない日が実に多いことも問題です。

そうした中で、東京オリンピック開催が決まりました。わたしは語弊があるかもしれませんが、ボートにとって千載一遇のチャンスだと考えました。この機会に、東京近郊になんとしても国際レベルの恒久施設としてのボートコースをつくりたい。日本ボート百年の計として、未来のオアズパーソン達にすばらしいボートコースをつくり残したいと考えたのです。ボート建設には巨額の資金が必要です。われわれだけの力でどうにかできる話ではありません。

今回、東京都の大英断で、「海の森ボートコース」建設が決まりました。日本に恒久的な国際レベルのボートコースをつくりたいというわれわれの悲願に、東京都は真正面から応えてくれました。心から感謝しお礼申し上げます。

3月26日(木)、わたしは、木村新理事長、相浦信行理事(事務局長)、細渕雅邦総務オフィサーと一緒に、東京都のオリンピック・パラリンピック準備局にお礼に行ってきました。中嶋正宏局長並びにこの1年間、ほんとうにわれわれと一心同体となって、計画づくりに尽力いただいた根本浩志大会計画担当部長、西沢拓競技担当課長、水飼和典施設担当課長も出てこられ、一緒に喜んでくれました。中嶋局長からは「これがスタートで、これからの本格的な建設工事が本番です。特にレガシー(後利用)を考えた世界に誇れるコースにするよう、協力してやっていきましょう」というコメントがありわたしも「ボート協会として全力を尽くします」と応じました。

全国のオアズパーソンの経験と知恵を総結集して、未来のボート関係者に真に喜ばれるコースづくりに邁進しようではありませんか。

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「オリンピックボート選手役員の会」という会を立ち上げ、3月14日(土)に設立総会を開きました。

日本のボートは、1928年の第9回アムステルダム大会に初めて選手を派遣して以来、前回の第30回ロンドン大会まで18回の大会に参加しています。参加選手は累計で163名、役員が42名となっています。成績はご存知のとおり、シドニーのLM2X(武田大作、長谷等)アテネのLM2X(浦和重、武田大作)の6位が最高で、まだメダルには届いていません。

今回、この会を立ち上げたのは、「オリンピックに参加はしたけれど、世界に厳しくはね返された」という、ある意味貴重な経験を、ぜひ今後の日本のボートの発展のために役立てるためにご尽力いただくことを強く期待してのことです。どのような貢献ができるのかは、皆で知恵を出し合ってもらいたいと思います。言うまでもないことですが、現執行部の施策に横からことわりなく口を出すことは、厳につつしまなければなりません。

会長には、1956年の第16回メルボルン大会に参加した岩崎洋三さんにお願いしました。ぜひよろしくお願いいたします。

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残念な事実ですが、やはりみなさんには知っておいてもらうほうがいいと思い、報告しておきます。

毎年JOC(日本オリンピック委員会)は「競技団体成績評価」を行い、それに基づいて、強化費配分とか、オリンピック、アジア大会などへの派遣人数枠が決められます。評価は「特A、A、B、C、D」の5段階評価ですが、ボートは今年、とうとうCランクに落とされてしまいました。評価基準は「成績」と「強化マネジメント」の両面から細かく決められているのですが、なんといっても100点満点中、オリンピックでの実績が45点、アジア競技大会、世界選手権等の国際大会の成績が25点の7割を占めているので、メダルを取らないことにはランク上がらない仕組みになっているのです。

口惜しいながら、今のボート競技の位置づけは、このレベルだという事実は、しっかり腹に入れておきましょう。

以上