公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第29信)

2015年1月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

明けましておめでとうございます。今年2015年が、日本ボート界にとって明るい年でありますように。今年もどうぞよろしく願います。

この「全国のオアズパーソンへの手紙」も第29信になりました。第1信を出したのが、2012年9月1日ですから、3度目の正月を迎えたことになります。早いものですね。この手紙を書きはじめたキッカケは、今でも鮮明に覚えていますが、8月20日の「ロンドンオリンピックメダリスト銀座パレード」をテレビで観たことです。華やかなパレードを観ていて「あぁ、ここにボート選手をどうしても立たせたい!」と強く思いました。

ボートという、あらゆる面ですばらしいスポーツが、単に「世界で勝てない。メダリストがいない」というだけで、日本ではマイナースポーツ扱いです。新聞・テレビでもほとんど取り上げられず、口惜しい限りです。わたしは「強い日本のボートをつくりたい」と強く思いました。そして「可能性は十分にある」と信じています。ただそれを実現するためには、今のままでは駄目で、ボート界をあげて変革しなくてはならない、と強く思ったのです。

「変革」とひとことで言いますが、もちろん簡単ではありません。わたしは「ボート界全体の底上げ」に、真正面から取り組もうと思いました。日本ボート協会の運営体制と方針、普及活動、広報活動、資金面の充実、国内レースのレベルアップ。こうしたすべての面について、しっかり底上げをする。そして同時平行的に本命の「日本代表のクルーの強化」に全力で取り組む。対症療法ではダメです。「世界と戦う!」という大目標を共有しながら、選手も指導者も、スタッフも、OB・ OGも、全員がそれぞれの部署でワンランク、ツーランク、レベルアップする。そうなってはじめて日本のボートが、世界と対等に戦い、勝つチャンスが持てる。わたしはそう考えています。

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12月19日(金)定例理事会で、ナショナルチーム用の艇を購入することを決めました。約2,000万円の予算で、11艇(LM4-3艇・LM2-4艇・LM2X-2艇・LW2X-2艇)をまとめて揃えることを、思い切って決断したのです。

現在、協会が所有している艇はスカルを除いて帳簿上は12艇(4-4艇、2-3艇、2X-5艇)なのですが、うち9艇が10年以上前購入の古い艇で傷みもはげしく、強化合宿のたびに借艇してしのぐ状況です。強化のためにはどうしても艇をそろえることが必要だと判断したのです。4月には納入される予定です。

12月も日本代表候補はシニア、U-23、ジュニア揃って戸田で強化合宿です。冬場のトレーニングが、この1年を決めるという信念で、選手諸君は頑張っているようです。コーチ陣の話では、この2週間の合宿で、目を見張るような進歩を遂げた若手選手もいるようで、楽しみなことです。

また、「世界トップレベルの選手たちと一緒に練習すべきだ」と考え、イタリアに出かけて強化に励んでいる2人の日本代表候補選手もいます。すばらしい決断で、できるだけの応援をしたいものです。

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『ヒトラーのオリンピックに挑んだ若者たち』という本はわたしが腰帯に推薦文を書いたということもあり、会う人ごとに薦めたり、何人かの人には進呈したりしているのですが、売れ行きはどうなのでしょうか。

先日、早稲田OBの坂内孝成さんと話をした時、「あの本にはボートの全てが書かれている。感動した。ぼくは2度読んだ」と言っていました。「そうか、坂内さんは2度読んだのか」と刺激を受け、わたしももう一度(以前はゲラ刷りでしたが、今度は正式の本で)読みましたが、やはりボートを描いた名著だと再確認しました。

前には読みとばしていたつまらないことにも今度いくつか気づきました。例えば、映画俳優のグレゴリー・ペックがUCLAバークレー校のボート選手だった(P132)とか、主人公のジョー・ランツが体育の単位を落とした(わたしも、教養の時体育の追試を受けた)とか(P166)、ルーズヴェルト大統領が熱心な漕艇ファンだった(P282)等々、ちょっといい話がたくさん書かれています。

そしてこれはつまらないことではないのですが、ジョー・ランツは高校生の時、鉄棒で大車輪の練習をしているところを「タレント発掘」に来ていたワシントン大学ボート部ヘッドコーチにスカウトされて、ボートを漕ぐことになったのです(P105)。ベルリンオリンピックの金メダリストも、大学に入ってからボートを漕ぎだした素人だったのですね。

これは山本伊知郎競技本部長に聞いた話ですが、東京オリンピックのスカル日本代表だった笠木聡臣選手は、恵那高校時代、陸上砲丸投げの名選手だったのを、東京教育大ボート部OBの先生の勧めで、ボートに転向したのだそうです。

タレント発掘は、やはり目のある指導者が本気で勧誘し、後々しっかりめんどうをみていくことが、一番大切なようです。

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「JALネクストアスリート・マイルプロジェクト」を12月から始めましたので、OB・OGの皆さん、ぜひご協力お願いします。

簡単にいうと、皆さんが獲得した「JALマイレージ」を日本ボート協会に寄付してもらい(寄付募集はJALがします)そのマイル数と同額をJALが上乗せしてボート協会に提供してくれる、というものです。募集期間は、2015年3月29日までと短いですが、ちょっとした配慮でボートを支援できるプロジェクトですので、よろしくお願いします。

以上