公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第26信)

2014年10月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

まず、ARF(アジアボート連盟)の会長選挙に立候補しましたが、みごと完敗したことをご報告しておきます。25ヵ国中7票しか取れず、中国のワン・シーさんが新しいARF会長に選出されました。準備その他を一生懸命やってくださった皆さんには心から感謝します。

ただ、負け惜しみでなく、今は会長にならなくて良かったと思っています。今の日本に、会長国としてARFの運営を引き受ける余裕と力がないことが(後でくわしく述べるように)遅ればせながらわかったからです。とは言え、これからもアジアを重視していきます。

第一に中国という強い目標に追いつき追い越すこと。第二にARFの一員として、審判員などの役員派遣は積極的に行うと共に、大会の開催も引き受けていくこと。当面はこの2点でアジアのボートの発展に貢献していきたいと思います。

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さて選挙結果はともかく、9月23、24日に韓国忠州で開かれたARF総会に初めて出席しましたが、ARFの実態、ひいてはアジアボートについて、じつに多くのことを知りました。これまでも千田隆夫国際委員長(ARF審判委員を長く務めています)から、その都度いろいろ聞いてはいたのですが、やはり「百聞は一見にしかず」です。新しく知ったこと、感じたことを3点書いておきます。

  1. まずARFの構成です。34ヵ国(地域)が加盟しているのですが、じつに多種多様で、まさにピンからキリまでが混在しています。今回の出席は25ヵ国で9ヵ国は欠席ですが、会費も払わず名目だけの国もいくつかあるようです。一方、ボートに熱心に取り組み、あなどれない力をつけてきた国も増えています。イラン、カザフスタン、インド、ベトナム、タイ、インドネシアなどで、今回もイランの金メダル(M1×)をはじめそれぞれメダルを取っています。また、ARF総会でのポスト獲得の意欲も強く、副会長(4人)選挙には8ヵ国が立候補しました。{イラン、シンガポール、台湾、インドネシアが当選、インド(女性)、カザフスタン(女性)、ウズベキスタンが落選、タイは投票前に辞退}

  2. 次にARFの運営です。これだけ多彩で主張の強いメンバーを束ねるのは、さぞ大変だろうな、と同情はしますが、それにしても相当乱暴な運営でちょっと唖然としました。

    まず総会のアジェンダ(議案)が事前に配られていないので、何を討議するのかわからない。150ページ以上ある資料も当日配布で、さすがに「今日、この場で審議はできない」という声が四方からあがり、挙手で決をとったら、何と10対10。議長の「もう一度」の指示でやりなおすと、11対10で議事進行に決まりましたが、誰が数えたのかもよくわからない始末です。

    また、来年(2015年)の「アジア選手権」「アジアジュニア選手権」の開催国にどこからも立候補がなかったのですが、中国が「どこもやらないなら中国が両方とも引き受けましょう。」と申し出たことには驚きました。もちろん、即承認されました。

    もっとも今回のアジア大会はアジア最高峰の大会(アジアのオリンピック)ということで、運営はキチッとしており、立派なものでした。

  3. 最後にFISA(国際ボート連盟)との関係です。今回FISAからは、ジャン・クリストフ・ロランド会長とマット・スミス事務局長が来ていて、スピーチをしました。その中で、特にARFに対し、「加盟国を増やしてほしい」という要望が出されています。

    FISAとしては、オリンピックのボートの出場枠(550人)を維持するためには「ユニヴァーサリティ(国際的な普及)」を高め、現在130ヵ国余のFISA加盟国をもっと増やしたい。アジア地区には44ヵ国あるので、あと10ヵ国は増やす余地がある、というのです。しかし、これは実態からいって、誰がみてもかなりの難題だと思います。

以上、ちょっと長くなりましたが、ARFの現状をお伝えしておきました。

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アジア大会には3種目派遣して、金メダル1・銀メダル2という立派な成績でした。男子軽量級ダブルスカルは、雨と波のある中、スタートから着実に差を広げる完勝でした。わたしが観ても、すばらしい漕ぎで、崎山利夫強化委員長も「世界選手権の時の不調を抜け出した」と言っていました。女子軽量級ダブルスカルは、第3クオーターで一度タイに抜かれたのを、第4クオーターで抜き返し、なんと0.07秒差での銀メダルでした。観客席も大興奮、選手も大きな自信につながったことと思います。

男子エイトもいい漕ぎでした。巨漢クルーの中国にほぼ1艇身差でくいついていったのは見事です。表彰台に並ぶと、頭ひとつ(20cm)くらい身長差があり、「日本の軽量クルーはたいしたものだ」とある外国役員がわざわざ褒めにきてくれたほどです。

下に国別メダル獲得数をあげておきます。日本も出漕すればメダルをとれる種目がいくつかあると思いますが、あくまでも目標は中国であることを忘れてはいけません。

◆国別メダル獲得数

国名
1 中国 9 1
2 韓国 2 5
3 香港 1 4
4 日本 1 2
5 イラン 1 3
6 カザフスタン 1 2
7 ベトナム 1 2
8 台湾 1
9 インド 3
10 タイ 2
11 インドネシア 1

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FISAのクリストフ・ロランド会長、マット・スミス事務局長と1時間ほど意見交換をして、たくさんの貴重な情報・サジェスチョンをもらいました。日本側はわたしの他に木村新理事長、細淵雅邦総務オフィサー、叶谷彰宏国際委員の4人です。

話題の中心は、新設する「海の森ボートコース」の「レガシー(後利用)」についてです。東京オリンピック終了後も、恒久施設として有意義に活用され続けることが、極めて重要だとFISAもIOC(国際オリンピック委員会)も考えている、ということで、いろいろ話し合いました。さすがにFISAは世界中の実例をたくさんつかんでいて、

  • シドニー/オーストラリア(2000年オリンピック)
  • ミュンヘン/ドイツ(1972年オリンピック)
  • セビリア/スペイン(2002年世界選手権)

の3ヶ所は参考にしたらよい、と推薦してくれました。

ポイントは「day to day(日々)」使われるようにすることが大事で、単なるボートコースとしてではなく「多目的水上スポーツセンター」として計画してはどうかという考えのようです。これは、わたしも漠然と考えていたイメージですが、今回の話し合いで、かなり具体的な画になってきました。3ヶ所の実情もよく調べて、10月中には「レガシー(後利用)」としての考え方を詰めていきたいと思います。

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今月は、ほとんどが韓国忠州でのアジア大会がらみの話題ばかりになりました。

国内では、9月11~14日の4日間、第92回全日本選手権大会が戸田で開催され、今年一年を締めくくるにふさわしい見ごたえのある好レースが続きました。男子8種目、女子5種目の計13種目で優勝を競いましたが、今年の特徴は優勝チームがばらけたことです。日本大学が3種目を制した他は、あとの10種目は全部別のチームの優勝です。女子の富山国際大学(W2×)は、全日本初制覇ではないでしょうか。男子シングルスカルは武田大作選手(ダイキ)がなんと14回目の優勝、そして男子エイトは6年振りに明治安田生命クルーが制しました。

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最後になりましたが、日本ボート協会のホームページに、強化委員会が「2014年強化活動総括」を載せているので、ぜひ見ておいてください。

以上