公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第20信)

2014年4月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

3月13日(木)ナショナルチームの代表選手選考レースを観戦に戸田へ行ってきました。好コンデションのなかでつぎつぎとレースが進み、今年の代表選手19名(シニア6名、U2313名)が決定しました。あとシニア・スイープの選手6名が4月の最終選考会で決まり、日本代表選手は合計25名になります。

今年は12月に第一回選考レースを行い、以後毎月1回計4回の選考レースをへて代表選手をきめました。新しい試みとして、毎回再チャレンジレースを行い、常に緊張感を保ちながら、現時点で最も強い選手を選ぶことができたと思います。

5月に戸田で開かれる「アジアカップ」が初戦になりますが、おおいに健闘することを期待しています。

強化委員会は今年1月に、2020年の東京オリンピックをにらんで、まったく新しい「強化戦略プラン」を決定し公表しました。ホームページに載せていますから、ぜひよんでおいてください

日本のボートのレベルを一段上げるためにはどうすべきかを、そうとう突っ込んで検討し、気合いがはいった総合的な強化戦略プランなのですが、一部を紹介しますと、まずトレーニング量を増やさなければならないとして目標をしめします。シニアなら年間10,000km、1,100時間の練習が必要、といった具合です。また外国選手に比べて甚だしく劣るフィットネス・フィジカル面の強化が絶対必要だとして、代表的な指標である最大酸素摂取量を10%近くあげるという目標をかかげています。

初戦となる「2014アジアカップ」は、5月16~18日に戸田で「軽量級選手権」と同時開催します。エントリーをしめきりましたが、想定以上の11カ国が参加、海外勢だけで140名を越す役員選手団が来日することとなり、宿泊場所の確保などで事務局は大わらわです。アジアのボートも、思った以上に普及も進み、強くもなっているようで、この大会でじっくり見させてもらうつもりです。2020年のオリンピックに向けて、これから毎年のように日本で国際レースを開催することになるでしょう。

もうひとつアジアのはなしですが、今年は4年に一度のアジア大会が韓国で開かれます。ボートは9月20~25日に忠州で開かれ、参加種目と選手枠をJOCと折衝してきましたが、先般ようやく決まりました。軽量級男子ダブルスカル、軽量級女子ダブルスカル、そして男子エイトの3種目13選手です。男子エイトが国際レースを戦うのは久し振りなので楽しみです。まずはアジア大会でのメダル獲得が今年の目標です。

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「海の森ボートコース」の建設は2020年の東京オリンピックに向けた大テーマですが、進捗状況を手短かに報告しておきましょう。

1月25日に「海の森ボートコース建設プロジェクト」を施設委員長の山崎佐知夫さんをヘッドとして発足させました。まずは東京都のオリンピック・パラリンピック準備局とコンタクトを取ることとし、28日と30日の2回、準備局を訪問し具体的な話し合いに入り、次いで2月7日には、準備局の方々(水飼施設担当課長ほか4名)に長良川国際レガッタコースを視察してもらいました。いずれヨーロッパなどの本格コースも視てもらうつもりです。

プロジェクトチームメンバーとして何人かの土木の専門家などにも参画してもらい、詳細設計を詰め、東京都へ提出する要望書をまとめつつあります。その要望に基づき、3月も何回か東京都と協議をしました。まずは日本ボート協会としての基本的な考え方・方針をキチッと打ち出し、東京都側によく知ってもらうことが大事だと考えています。

世界で初めて海につくる本格コースなわけですから、いろいろ難しい問題が出てくるでしょうが、ボート界みんなの知恵と情熱を糾合して、立派なボートコースを作り上げましょう。

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いよいよボートシーズン幕開けです。3月21~23日、浜松市天竜ボート場で第25回全国高等学校選抜ボート大会がひらかれ、わたしも初日だけ観に行ってきました。全国9ブロックの地区予選を勝ち抜いた、144クルー384名の参加です。ちょっと風が強かったですが、咲き始めた河津桜の下で若い選手諸君は元気いっぱいです。

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ジュニアクルーの育成・強化が日本ボートの強化にとってもっとも重要なことは、いまさら言うまでもありませんが、高体連の先生方がしっかり取り組んでくれているので安心しています。しかしオリンピックでメダルをという目標を考えると、ジュニアも世界大会でメダルを、あるいは少なくとも決勝進出を目指してほしいと思います。8月には世界ジュニア選手権(ドイツ)9月にはアジアジュニア選手権(台湾)があります。またこのあと日本では、6月に全日本ジュニア選手権、8月にインターハイ、そして10月の長崎国体と続きます。

若い選手諸君の健闘を期待します。

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3月1日(土)に下村博文文部科学大臣と会食する機会がありました。大臣からは、スポーツ庁新設のはなし、スポーツ予算増額の件、また全国各地でオリンピックの事前キャンプを招致するよう呼び掛けている、といったはなしがありました。わたしからは、「海の森ボートコース」の建設計画をすこしくわしくご説明し、「世界レベルの恥ずかしくない施設にしたい。よろしくご支援を」とお願いしておきました。「オリンピックでボート競技は何種目あるのですか」と訊かれて「男女あわせて14種目」とお答すると「そんなに多いのですか。じゃあぜひメダル頼みますよ」と言われ、やはり大臣の関心はそこか、とあらためて思ったことです。

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日本ボート協会の前審判委員長の小林宗一さんが、昨年秋の叙勲で瑞宝単光章を受けられました。地元での40年以上にわたる消防団員としての功績が認められたものです。おめでとうございます。

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3月16日(日)会津若松市で開かれた祝賀会にわたしも参列しましたが、最後の小林さんのご挨拶がたいそう立派で参考になる点もあったので、ちょっと紹介しておきます。

小林さんは挨拶のなかで、自分にとって消防団活動とともに、ボートの審判員としての活動が人生の核であったとおっしゃいます。そして日本ボート協会の審判委員長になるまでの経緯を、とつとつと話されましたが、たいそう興味ある話でした。

まず、当時の福島県ボート協会長であった小野尚さん(故人)が「福島県は審判団を徹底して鍛え育てよう」と決意したことが大きかったといいます。徐々に福島の審判団は優秀だという評価が定着し、徳島国体の時など特に応援を頼まれ、大挙してかけつけるまでの力をつけたそうです。

その後、日本ボート協会の浅見栄一理事長(故人)から福島県に「中央に出てきて手伝ってくれ」と頼まれたとき、当時の福島県審判委員長の武藤孝章さんが「若手を送ります」とまだ30歳代だった小林さんを日本ボート協会に送り出したのがはじまりだそうです。

小林さんは「福島県喜多方の田舎の審判員が、中央の経験豊富な審判員と伍していくのは、ほんとうに大変です。ましてや審判委員長をやれるなどとは夢にも思いませんでした」とおっしゃっていますが、実感だろうと思います。しかしその後、じつに存在感のある名審判委員長として10年ちかく全国の審判員を統括し、日本ボート界に多大の貢献されたことは、みなさんご存じの通りです。

各県のボート協会がこのようにして、選手だけにとどまらず、ボート界をささえる優れた人材を育ててくれているのだなと、あらためて認識しました。

以上