
2026(令和8)年2月8日(日)に埼玉県戸田市のサンクジャパン戸田公園でU19代表候補選手とシニアトップ選手による合同強化合宿を行いました (主催:(公社)日本ローイング協会 強化委員会)。
季節外れの大雪に見舞われた2月8日(日)。サンクジャパン戸田公園は一面の銀世界となりました。 気温も氷点下に迫る厳しいコンディションの中、艇庫内と水上は、日本ボート界の次世代を担うU19代表候補選手たちの熱気に包まれていました。
本合宿の目的は、高校生選手への技術継承と、世界基準のボートスピードを肌で感じる「刺激入れ」です。
指導役として集結したのは、荒川龍太選手(元NTT東日本)、米川志保選手(トヨタ自動車)、櫻間達也選手(NTT東日本)、冨田千愛選手(東京大学RSL)ら、日本のトップ選手たち。彼らは高校生と混成クルー(4 xや2 x)を組み、座学から実技まで濃密な時間を共有しました。
降りしきる雪を避け、まずは室内でのミーティングからスタートしました。荒川選手はローイング競技への向き合い方を説きました。
「きつい、しんどいだけではなく、ボートが物理的にどう動くかという『理屈』と、艇が進む『楽しさ』を早い段階で知ってほしい」。
冨田選手は自身のキャリアを振り返り、指導の意図をこう語りました。「私自身、昨年トヨタ紡織で世界のトップ選手のジャッキーさん(NZL・Jackie Kiddle選手)など外国人選手から学び、キャリアの後半になってようやく得られた知識や感覚があります。それを、若い世代に今伝えることで、成長に費やす時間を短縮してほしいのです」。
彼女の言葉には、自身が長い時間をかけて到達した世界基準の領域へ、高校生たちには最短距離でたどり着いてほしいという願いが込められていました。

その後、選手たちは雪の舞う水上へ。
トップ選手の漕ぎを間近で見るだけでなく、同じ艇に乗ることで「ストローク中の艇の動き」や「リズム」を直接体感します。
フィニッシュの動作に悩んでいた三村真由選手(立命館守山高)は、冨田選手との2xでの乗艇で劇的な変化を実感しました。
「これまではフィニッシュで詰まってしまい、水中でオールを返して減速していましたが、冨田さんに『抜き上げてからターンする』ドリルを教わり、感覚が一変しました。何より、トップ選手はどんな動きでも『体幹に絶対にブレない軸』がある。その安定感に衝撃を受けました」。
梶ひまり選手(加茂高)もまた、米川選手と乗艇して新たな感覚を掴みました。
「キャッチから水をつかむ重さが全然違います。リラックスしているのに、水中では強く押す。そのメリハリと、一本で進む距離の長さに驚きました。シニアの先輩の『ギュン』と加速するリズムに引っ張られ、良いイメージが体感できました」。

男子4xでは、荒川選手や櫻間選手がストロークとして乗り込み、高校生たちをリードしました。荒川選手と乗ったクォドクルーは最後のミーティングでこう感想を述べました。
一瀬弥満登選手(若狭高)は、「腕や脚だけでなく、身体の『幹みき』から出力されている感覚が凄かった」と、 トップ選手の体幹の使い方に圧倒された様子。
石丸風芽 選手(美方高)は、「キャッチを無理やりつかみに行くのではなく、自然とつながってから力が出る感覚が理解できた」と技術的な発見を口にしました。
特に印象的だったのは、山田鳳介選手(美方高)の感想です。
「パドルでは最初の3本でスピードを立ち上げて、そこから軽く力を足していくと教えてもらいました。やってみると艇がものすごく進むんです。自分はずっと力を出し続けていました」。
首田笙選手(津幡高)も、「キャッチやフィニッシュといった点だけでなく、全体を通して一定で強く漕ぎ続けることで、艇が加速し続ける感覚を掴めました」と語りました。
櫻間選手は、クルーの乗り替わりの際に雪の中でローイングの体幹の動きについて指導。ボディスイングの仕方を問われ、「ウェイトのバーを持ち上げて首まで引き上げるハイプルという種目があるんですけれども、脚から動き初めて股関節を伸ばしながら最後に腕を引く、この動きがローイングに近いんです。この股関節の動きを意識してほしい」。

視界が白く霞むほどの降雪の中でしたが、練習後の選手たちの表情は充実感に満ちていました。合宿の締めくくりに、米川選手は笑顔でこう話しました。
「やっぱり、艇が『スッ』と進む瞬間が一番楽しい。その感覚を共有して、みんなに楽しく漕いでもらえたら嬉しいです」。
シニア選手たちにとっても、高校生のひたむきな姿勢や、エントリー周りのスピード感は良い刺激になったようです。

「力任せ」から「効率」へ。「感覚」から「理屈」へ。雪の戸田で交わされた世代を超えたバトンは、春からのシーズンで高校生たちの大きな飛躍となって現れることでしょう。