公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

NTC競技別強化拠点NTC FOR ROWING

NTC競技別強化拠点 戸田ナショナルトレーニングセンター(T-NTC)便り

2013年05月23日
NTC競技別強化拠点
トレーニング講習会報告

全日本軽量級選手権の開催週にトレーニング講習会を開催しました。今回実施した講習は、 文部科学省から独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が受託した事業であるナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点施設(ボート)の活用事業です。 ナショナルチームの活動拠点として利用することはもちろん、ボート競技の底上げ・強化を目的に実施するものです。 ボート競技に携わる多くの指導者・選手に利用してもらうために、本年度も全日本軽量級選手権、 全日本大学選手権、全日本選手権、全日本新人選手権の開催週に企画しました。

今回、実技の講習と理論の座学を企画しました。レース前にもかかわらず、 2講座合わせて70名(実技講習25名、座学講習45名)の方に参加していただきました。 次回は8月に実施しますので奮ってご参加ください。 なお、今回参加できなかった方のために、今回の復習と次回の予習をかねて、 太っ腹な澁谷先生から今回のプレゼン資料を提供していただきました(※HP原稿下段をご覧下さい)。 先生は元JISSの科学研究員としてご活躍されていました。 現在では、ご自身でも大学ボート部のコーチングをされ、 また社会人や大学ボート部のトレーニングメニューを作成する専門家としてフィールドに立たれています。 澁谷先生の講座は2回シリーズで8月に続編を実施します。 トレーニング処方(トレーニングメニュの作り方)を正しく学んで、 日本ボート界の競技レベルを底上げしていく礎にしていきましょう。

【OSSAの実技講習】

1.日時
平成25 年5 月15 日(水)と16 日(木) 16:00~18:00
2.場所
NTC 競技別強化拠点施設(ボート) トレーニングルーム
3.事業
トレーニング講習会
4.対象
中学生・高校生・大学生・社会人の指導者及び選手
5.講師
長内暢春氏  戸田NTCディレクター
6.内容
『ローイングにおける動きを変える動作評価とコーチングテクニック』
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動きを変えるトレーニングエクササイズ・テストの評価表(一部) 左から、エクササイズ、肢位、体力要素、評価の観点、評価点数記入欄、目的、関節運動、主要な筋  8種目のエクササイズの動き方を学習し、5分ほど練習をした後に評価テストに入った。今回は交流をかねて違う団体の選手・指導者と2人1組になり、一方がコーチング役をするかたちで実技を行いました。

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一本橋。インラインランジ。膝関節90°、後ろ脚の大腿部が90°でつま先立ち。骨盤を前傾させず中間位で動き始める。バーが背屈姿勢(腰椎屈曲)で体幹から離れないように保つ。右足と左足が一直線なので基底面が縦に長細く、おまけに両手はバランサーとして使えないのでボディバランスを保つのが難しい。目的は股関節のモビリティとスタビリティ、膝関節と足関節のスタビリティ、大腿四頭筋の柔軟性。片脚を踏み込む際に上半身に動揺がないか、両足が一直線上にあるか、後ろの膝が床に触れているか、などを評価観点として点数化していきます。

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爬虫類ハイハイ。 今回の種目中、難関のエクササイズ。受講者は大苦戦していました。手・手・手・足という順番でジグザグに前進していく。腹臥位(魚類)、腹臥位で前腕部・下腿部スリスリ(両生類)、そして膝と肘が床から離れ(爬虫類)、四肢歩行(哺乳類)への系統発生と発達をアスリートのエクササイズとして導入し再現していく。その中のエクササイズの一部が今回の爬虫類ハイハイです。重力から解放されていくなかで、自重負荷を背負っていくために必要な筋力が必要になってくる。しなやかに動くための動的柔軟性、そしてバランスよく手足を動かすコーディネーション能力(動的調整力)を伴った素早い動作が要求される。もたもたしていると、後ろから肉食達がやってきて食われてしまうんだ。

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ボート漕ぎ。文字通りローイング動作です。目的は股関節、膝関節、足関節のモビリティとスタビリティ、肩甲帯と胸椎のモビリティ、体幹のスタビリティ、上肢と下肢の協調性です。キャッチでつま先が上を向いているか。ドライブで伸展動作にスピード感があるか。上肢は肩の水平伸展/屈曲の動きを観察します。

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フィニッシュでつま先が上を向いているか。膝が曲がっていないか。胴体が水の上と同じ位置で後傾し、動揺はないか。リカバリーで素早く胴体が前傾しているか。写真は、足首に負荷ベルト(3kg)を取り付けてみました。いい筋トレです。

【参加者の感想文から】

今回、長内さんの動きを変えるコンディショニングトレーニングに参加して、動きの部分の改善が重要だということがよくわかりました。自分は今まで、エルゴスコアをトレーニングの指標として考えていましたが、数値には表れない、ローイング動作における足の先から足首、脚、股関節、体幹、上体、腕という一つ一つの筋肉の動きのつながりの部分が、柔軟性もふくめて、必要であることが、いくつかのエクササイズをやる中ではっきりとわかったのが今回の収穫でした。

また、エクササイズの中で支持された動きを頭で理解して、動きのイメージを作って実際に自分でそのとおりに動くということが意外と難しく、動きを意識したトレーニングにこれから取り組んでいきたいと思いました。

【しぶけんの座学講習】

1.日時
平成25 年5 月17 日(金)16:00~18:00
2.場所
国立スポーツ科学センター戸田艇庫2階
(又は戸田ナショナルトレーニングセンター トレーニングルーム)
3.事業
トレーニング講習会
4.対象
中学生・高校生・大学生・社会人の指導者及び選手
5.講師
澁谷顕一氏(日本ボート協会 医科学委員会スタッフ)
6.内容
『トレーニングメニューを作ろう』
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とても具体的で現場に即していて、わかり易い講義でした。当日の飛び入り参加者もいて賑わいました。

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実際にエルゴ2000mの測定値からトレーニング目標となる最大酸素摂取量やパワーを計算してみました。

【参加者の感想文から】

トレーニングメニューを作るという澁谷先生の講習は、とても具体的で、実際にチームやクルーのトレーニングメニューを作成するコーチの立場として、大変役に立った。

長期的目標の設定、選手の特徴を理解することなど、トレーニングメニューを作るさいの優先順位が明確。

また、通常なら大がかりな運動能力測定が必要な選手の身体能力についても、エルゴでかんたんに把握する方法を紹介してもらい、それぞれの選手の薬店が明らかになり、トレーニングの目標も明確になった。次回、今回の講習を基に作ったトレーニングメニューをどう評価してもらうか楽しみだ。