公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第38信)

2015年10月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

今月は「全日本選手権」(9月10日~13日 戸田)と「紀の国わかやま国体」(9月27日~30日 琵琶湖)と、2つの大きな大会が開かれました。どちらの大会でも思いがけない自然の猛威に襲われ、改めて「ボートは自然の中で戦うスポーツなのだ」ということを実感させられました。

まず「全日本選手権」ですが、関東・東北地方を襲った記録的な豪雨で、前日の夜中に戸田コースの水位が2mも上昇するという大変なことになりました。水路施設担当のみなさんは、10日未明から集まり、被害状況を確認しましたが、発艇ポンツーンが壊れるなど甚大な被害です。結局、初日予選は、500m地点にスティクボートを設置し、全レース、距離を1500mとすることとしました。たぶん(わたしの知る限り)史上初めてのことだと思います。それでも、埼玉県や関東学連の協力も得て、2日目以降は2000mでレースを行うことができ、無事4日間を終えることができました。関係者諸氏のご尽力に心から感謝します。

レース結果について気づいたことを2~3書いておきます。女子では、学生が全5種目で優勝しました。社会人が1つも勝てなかったのは初めてではないでしょうか。本気で女子クルーを育てる実業団には、さらなる強化を強く期待したいと思います。

男子では8種目中5種目が社会人でした。注目されたエイトでは、インカレを制した早大などを押さえて、日大が執念の優勝(4年振り)でした。

なお、男女とも種目によってある団体が連勝するケースが結構多いなあ、と感じました。全13種目中6種目が2連勝以上で、やはり、「去年勝った種目は今年も!」と力が入るのかなと思ったことです。

今年凄く評判が良かったのは、観客席の対岸に設けられた「電光表示板」でした。レースの状況その他のニュースが文字情報ですが、よく分かります。今後はさらに1,000mの通過タイムなどが、瞬時に出るようになると素晴らしい、と期待がふくらみます。

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次に「紀の国わかやま国体」ですが、ボートは琵琶湖での開催です。こちらは、初日から好天には恵まれたのですが、実は、今年の春先から大量に水藻が発生し、その除去で準備段階は大変だったようです。漁協の協力も得て、機械や手で湖面から漁船に水藻を刈り取り、なんと「約25㌧除去した」ということです。市の焼却炉では処理しきれず、まだ岸辺に山積みされている状況でした。

滋賀県ボート協会が全力を挙げて協力し、また地元のボランティアのみなさんも一生懸命に動いてくれたとのことで、和歌山県ボート協会の泉充治会長から深い感謝のことばが述べられていました。

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27日の夜は「都道府県連絡協議会」です。47都道府県のボート協会長が一堂に会する年1回の恒例の会議なので、日本ボート協会が取り組んでいる重要事項をできるだけ丁寧に報告するように努めています。

席上、これも恒例の有功者表彰を今年はお二人に差し上げました。一人は別府克己さん。戸田で永年艇の修理などに携わってきて、多くのみんながお世話になった方です。もう一方は宮原敏秀さん。九州ボート界の審判長などを歴任され、ボートの普及発展に多大の寄与をされた方です。

本当におめでとうございます。

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「第24回全国市町村交流レガッタ」が石川県津幡町で、9月27日~28日に開催されたので行ってきました。

実にユニークなレガッタで、わたしは、ボートの地域振興・普及の核になる大切な大会だと思い、毎年行くことにしています。

主催は「全国ボート場所在市町村協議会」です。いま全国に60ある公認ボートコースのちょうど半分、30のボート場所在市町村が加盟しています。

そもそもボートコースがなければボートは始まりません。そのボートコースを持つ市町村の首長さん、議員さんたちに、ボートを知ってもらい、好きになってもらい、応援してもらう。そのためには、まず、できれば漕いでもらおう、ということなのです。「議会議員」「議会議員シニア」という種目があって、みなさん揃いのTシャツに身をかためて嬉々として漕いでおられます。今年は議員さんクルーが、26クルーも参加しているのです。また公平に勝つチャンスが持てるように、前年優勝クルーは半分が新人に代わることになっているのもユニークなルールです。

このレガッタのもうひとつの特徴は、夜の交流会です。宴たけなわになると、30市町村の選手たちが順番に壇上に上がり、時間制限2分でお国自慢をします。幟を立てたり、ゆるキャラを連れてきたりで、大騒ぎです。今年は特に津幡町の盛り上げ方が抜群で、町のブラスバンドのすばらしさと料理のおいしさは大好評でした。

なお別に「議会議長懇話会」と「首長会議」の2つの会議が開かれます。これが実に有意義な会議なのですが、詳しくは、いずれ機会をみて書くつもりです。

ちなみに、今回は首長さんが8人、議長さんが15人も参加されましたが、こんなことは他のスポーツでは絶対に考えられないボートならではのことと思います。

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実に残念な事件でした。ボート界にあってはならない、そして所属団体のみならず、ボート界全体にも大きな影響を与えた事件です。全国のオアズパーソン全員が、改めて心に刻み込むべきと思い、迷いましたが書くことにします。

9月7日の各紙で大きく報道されましたが、ボートの現役選手(2013年の世界選手権日本代表選手)が、破廉恥な容疑で逮捕されたのです。どんな罪でも犯してはいけないのはあたりまえですが、今度の事件では社会的にボートのイメージを大きく損なったと思います。所属する会社としても企業イメージを傷つけられたことを厳しく受け止めたのは当然のことです。早々に処分方針と内容を、協会に報告に来られました。

内容は3ヵ月間の活動自粛です。その結果、国体の東京都代表に決まっていた、舵手つきフォア、ダブルスカル、シングルスカルの3種目には出漕できなくなりました。また「ふるさと選手」として4人が4県に登録されていましたが、これも出漕できません。

さらに日本代表候補としてリオ・オリンピックを目指している選手にとっても、その間代表合宿に参加できないわけで、深刻な状況です。

いずれにしろ、ひとりの男の軽率な行為が、仲間たちの人生を左右させるほどの影響を与えたのです。

ボート競技は、伝統的に学生スポーツとしても、人間形成に最もふさわしいスポーツであると、われわれは考えてきました。昔のエイト中心時代とは違い、今は個人種目としてのシングルスカルなどが重視されるようになり、これまで通りのオアズマンシップ(伝統的な言葉を使います)を教えることは難しくなっているのかもしれません。しかし、ボート精神の根本が変わるはずはありません。指導者のみなさんは、いま一度ネジを締めなおして下さい。よろしくお願いします。

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「オリンピアンの会」が活動の幅を広げてくれています。

9月6日(日)、大田区の嶺町小学校で「みんな集まれ!未来へつなげ!世界は夢じゃない!(オリンピアンによるトークショー&ボート体験)」が、大田区の主催で開かれ、6人のオリンピアンがトークショーと多摩川でのボート体験指導をやってくれました。

当日は、なんと148名の子供たちと父兄が集まり、トークショーでは「オリンピックの選手村ってどんな感じですか?」などの質問が出たりして、みんな熱心に聞いてくれたようです。それからエルゴを漕ぎ、実際にボートにも乗って、新しいボートファンがたくさん生まれたのではないでしょうか。

また9月27日(日)琵琶湖での国体会場で2回目の「オリンピアンによるエルゴメーター指導会」が開かれました。これには、わたしも参加し、「ぜひ将来のオリンピック選手を目指して下さい」と子供たちに呼びかけておきました。

この日は、滋賀県の「次世代アスリート発掘育成プロジェクト」の第2期生約30人の少年少女が参加してくれたのです。オリンピアン4名に加えて、瀬田ローイングクラブの選手諸君が熱心に応援してくれて、充実した指導会になったと思います。

このところ各自治体などでは、「アスリート発掘活動」が盛んになってきています。ボートオリンピアンの会が、この活動とガッチリ結びつけば、相当おもしろい展開になるような気がして、楽しみです。

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以上