公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第34信)

2015年6月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
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第37回全日本軽量級選手権大会は5月22日(金)~24日(日)の3日間、戸田コースで開かれました。天気にも恵まれ、約670名の選手が、女子3種目・男子6種目で覇を競い、なかなか見ごたえのあるレースが多かったように感じました。

軽量級だけを独立させたこういう大会は、他の国にはない日本独特のレガッタのようです。この大会の歴史については今年のプログラムに畑弘恭さん(日本ボート協会顧問)が詳しく書いて下さっているので、ぜひ読んでおいてください。

軽量級が世界選手権に取り入れられたのは、1974年からです。そして第1回の全日本軽量級選手権が開かれたのは、5年後の1979年でした。また、日本が強く主張して、オリンピックに軽量級が導入されたのは、更にその17年後1996年のアトランタ大会からで、以来5回のオリンピックには、毎回日本代表選手を派遣していますが、まだ念願のメダル獲得ができていないことはみなさんご存知のとおりです。

今年の大会で、特にわたしの目についたのは、「若い選手・クルーが力をつけてきたな」ということです。優勝者をみると、1Xでは女子が16歳、男子が19歳です。女子では、他の2種目とも平均年齢が20歳なのです。男子でも4Xが20歳、8+が21歳のクルーが優勝し、27歳以上のベテランクルーが勝ったのは、2-、2X、4-の3種目でした。

これは何を物語っているのでしょうか。遅くとも高校時代にしっかりした指導をして、キチッと練習を積めば日本選手権は取れる、ということなのでしょう。高校生(あるいは中学生)の指導体制が充実してきたことの証(あかし)かもしれません。

彼ら彼女らが、世界で通用するように育ってほしい。わたしは強く願い、期待しています。

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第8回全日本マスターズレガッタが、5月16日(土)~17日(日)の2日間、島根県の雲南市と奥出雲町に位置する「さくらおろち湖」で、1,000名を超える選手を集め、賑やかに開かれました。昨年の群馬県館林市の「城沼コース」に続いて、今年も当該コースでの初めての全国規模のレガッタ開催ということで、正直、ちょっと心配していましたが、結果は大変な盛会で、運営もスムーズ、なにしろ環境が抜群にいいので、選手諸君の評判も上々でした。

わたしも現地に着いたとたん、「毎年ワールドカップが開かれるスイス・ルツェルンの Rotsee ( ロートゼー ) (ロートゼー)湖に似ているな」と感じました。

マスターズは益々盛んです。

わたしは、マスターズのキーワードは「交流」だと思います。ひとつは昔戦った「艇友」との交流。そしてもうひとつが、「地元」との交流です。去年の館林・城沼コースにしろ、今年のさくらおろち湖にしろ、普通はなかなか訪れるチャンスがありません。行ってみて初めて、地元に根づく豊かな文化・伝統を知る事ができますし、また地元の人達との交流が深まります。マスターズレガッタの偉大な効用だと思います。

懇親会には、地元出身の竹下亘復興担当大臣はじめ溝口善兵衛島根県知事など多くの地元有志の方々も出席され、交流を深めることができました。

また、今年ちょっと目をひいたのは、オーストラリア・メルボルンから30名ものマスターズ達が、夫妻連れで参加してくれたことです。国際色豊かなのはいいことだなあと思いました。

メルボルンの艇友達は来年も来てくれるかもしれないし、他にも、中国、韓国、ベトナムなどアジア各国に呼びかけたら、おそらくかなりの外国人マスターズが参加するのではなかろうか、と思いました。実質的に「アジア・マスターズレガッタ」みたいなことを考えてもいいかもしれません。

いずれにしろ、主菅された島根県ボート協会、雲南市・奥出雲町実行委員会のみなさんには、献身的なご努力ですばらしい大会にしていただいたことを、心より感謝いたします。

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「オリンピアンが教えるマシンローイング教室」が、5月24日(日)、軽量級選手権が行われている戸田ボートコースの観覧席後ろで開かれました。3月に結成された「オリンピックボート選手役員の会」が行う最初の行事です。

テントの中にエルゴを6台並べて、6人のオリンピアンが30分ずつ個別指導をするのです。生徒は、中学生・小学生で、「江戸川区ボート協会」「葛飾区ボート連盟」「ワセダクラブ」「横浜ジュニアローイングスクール」「多摩川でボートを楽しむ会」に所属する約30名が集まりました。

なにしろオリンピアンによる1対1の指導ですから、生徒も先生も、見ていてすごく気合が入っていて、しかし同時に「暖かい目で育ててあげよう」という雰囲気もあって、いい感じでした。

次回は9月の国体の時に琵琶湖での開催を予定しているとのことです。

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パラローイング(障がい者のローイング)について、すこし詳しくお話しておこうと思います。ボート関係者のなかでもパラローイングのレースを観たことのある人あるいはパラローイングについて知見のある人は、ごく少数だろうと思いますので…。

日本で初めて障がい者のボートレースが行われたのは、2005年、長良川での世界選手権の時でした。40名ほどの障がい者のローイング選手が世界から参加しましたが、日本にはまだ選手がおらず、参戦できませんでした。そこで翌2006年、「日本アダプティブローイング協会」(当時の名称)がスタートし、選手の募集育成、練習をはじめたのです。

ちょっと考えれば分かるように、健常者のローイングと違いパラローイングは選手も指導者も、特別の研修、チェックを受け、ライセンス取得が必要になります。FISAが細かく規定していますが、例えば、選手は種目ごとに専門医療担当者による「体幹機能検査」が必要です。また艇具(艇、固定シート、ベルト等)の安全性のチェックも専門家がやらなければなりませんし、指導者は「日本障がい者スポーツ協会/日本パラリンピック委員会」による研修会に参加して、ライセンスを取得しなくてはなりません。

現在、日本には約10名(男子8名、女子2名)の選手がおり、資格を持った指導者、サポーターは約20名います。練習は原則月に2回、鶴見川、相模湖、諏訪湖、琵琶湖などで行われています。

国内でのレースは、先日のさくらおろち湖でのマスターズレガッタにオープン参加したように、年間10レースほどを、健常者のボート大会に合わせて開催しています。

国際レースでの目標は、オリンピックと同時開催されるパラリンピックへの参加と、4年に1度行われるアジアパラ競技大会出場です。

最近では、2012年のロンドンパラリンピックに1Xが参加、また2014年の韓国忠州アジアパラ競技に参加し、見事「混成2X」で銀メダル「男子1X」で銅メダルを獲得しています。

来年のリオパラリンピックへの参加枠を得るため、今年8月フランスでの世界選手権が当面の目標であることは、健常者のボートと同様です。頑張ってください。

ボートはFISAでも日本ボート協会でも健常者の大会と、障がい者の大会を同時に開催していますが、これは他の競技ではみられない、ボートの誇るべき進んだ考え方だと思います。

オアズパーソン緒兄姉の、パラローイングに対する絶大なご理解ご支援を、ぜひお願いします。

以上