公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第11信)

2013年7月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

FISA(国際ボート連盟)会長のデニス・オズワルドさんが来日されましたので、 6月18日(火)に日本ボート協会の幹部有志で歓迎会を催しました。来日は2005年の長良川世界ボート選手権の時以来で8年ぶりです。

オズワルドさんは1968年メキシコオリンピックの舵手付きフォアの銅メダリスト(スイス代表)という名選手でもあり、 1989年には42歳の若さでFISA会長に就任、それ以来24年間にわたって世界ボート界の発展に尽くしてこられました。 特にわたし達日本人として感謝しなければならないのは、 「軽量級種目のオリンピック導入」がオズワルドさんの信念・情熱・リーダシップによって初めて実現した事実です。 日本ボート協会としても、当時の佐々木亨参与(アジア漕艇連盟副会長)木村稚夫国際部長などが中心になって、 必死の働きかけをしたのはもちろんです(お二人には歓迎会に出ていただきました)。 いろんな経緯がありましたが、ついに1996年のアトランタオリンピックから、 軽量級3種目(LM4-、LM2×、LW2×)がボートの正式種目として採用されました(一方で、M4+、M2+、W2-の3種目が外れました)。 その結果、次のシドニー、アテネの両オリンピックで日本のLM2×が決勝進出、6位入賞という立派な実績を残せたことは、 記憶に新しいところです。

オズワルドさんは、この9月に国際ボート連盟会長を退くことを表明しています。 そこで24年間の会長としての思い出を語ってもらいました。

いちばん心に懸けてきたのはボートの「ユニバーサリティ」、 つまり「ボートを全世界的に広めること」だと強調されました。 「身体が小さく軽量のアジアの人たちや伝統のないアフリカの人たちでも、オリンピックに挑戦する意欲を持てるようにすべきだ。 世界のボート人口を拡大して、オリンピックへの参加国をもっと増やしたい」というのです。 ボートはオリンピックへの参加人数が多い(約600名で陸上、水泳に次いで第3位)わりには、 参加国数となると欧米のボート大国を中心とする50カ国弱にとどまり、IOCでは問題視されているのだそうです。 「まさかボートがオリンピックから外されるなんて……」とは思いますが、 最近のレスリングの例もあることですし、うかうかできないようです。

このオズワルドさんの考えは、ごくまっとうなものと思えますが、 当時の世界ボート界では独・英など伝統的なボート大国が猛反対して、なかなかまとまらなかったのです。 反対理由も「バスケットボールに“低身長級”をつくるようなものだ」とか「“軽量級”をつくっても、 結局勝つのはわれわれ伝統国だ」といったものだったようです。 それをなんとか押し切って、FISAとして1993年ブタペストでの特別総会でギリギリ可決できたのは、 まさにオズワルドさんのリーダシップによるものだったのです。

その意味で、われわれ”軽量級国”はオリンピックで頑張る義務があるのです。 去年のロンドンオリンピックのLM4-でボート新興国である南アフリカクルーが、 大激戦を制して金メダルに輝いたことを、オズワルドさんはたいそう喜んでいました。

日本ボート協会として、オズワルドさんの長年のご尽力に、あらためて深く感謝申し上げます。

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今年の海外レースの初戦である「ワールドカップ第2戦」(6月21日~23日 イギリス・イートン)の結果をご報告します。 軽量級5種目に6クルーが参戦しましたが、残念ながら完敗といわざるをえないでしょう。 ありきたりの反省はやめて、現在の日本の力を冷静に分析し、次なる強化に向けてなにをしなければならないのか、 あらゆる側面からの検討が大切です。とにかく一歩でも二歩でも踏み出しましょう。

1、LM4-  6位 (8クルー中)
2、LM2-  4位 (4クルー中)
3、LM2×  8位 (15クルー中)
4、LM1× 16位 (17クルー中)
5、LW2×
・Aクルー  7位 (10クルー中)
・Bクルー 10位( 同上  )

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6月15日(土)日本ボート協会の「平成25年度通常社員総会」が開かれました。 いわば一般企業の株主総会にもあたる、いちばん大事な会です。正会員は現在89名ですが、出席者は40名でした。 各県のボート協会会長の出席が今年はちょっと少なかったような気がしましたが……。

議事内容は、決算・予算を中心とする8つの決議議案と、4つの報告事項(この内に先月のこの手紙で紹介した、 「新生日本ボート協会のビジョン」と「発生事故の報告」が含まれています)とで、約1時間半で終わりました。 終了後のみなさんとの懇親会が非常に大事な情報交換の場となっているようです。

ご存じのように、このところ各スポーツ競技団体では問題がつぎつぎと現出して、 おおきな騒ぎになっているところがいくつかあります。なかでも柔道界がいちばんの騒ぎになっているようで、 日本代表選手への暴力指導、セクハラ、助成金の不正受給、また学校スポーツでの暴力指導など、つぎつぎと取り上げられて泥沼状態です。

またプロ野球でボールの規格をひそかに変えた問題も、コミッショナー退陣要求にまで発展しています。 バレーボール協会では協会財政の赤字問題で会長が更迭されました。いずれのケースでもトップの進退問題になっていますが、 根本は結局、組織マネジメントの不備ということにつきあたるようです。

そうした背景のなかで、いくつかのスポーツ団体が会長や新任理事の人事で、 思いきった手をうちはじめました。水泳連盟が鈴木大地さんを会長に抜擢した気合いと勇気には感心しました。 またマラソンの高橋尚子さんを陸上連盟が理事にし、さらにJOCが理事に選任したのにも驚き、 同時に拍手したい気持ちになりました。

こうした人事の背景には3つの意図が読み取れます。まず一つめは、 選手の意向が十二分に反映されるアスリート第一の協会運営にしなければならないという意図、 二つめは若返りと女性活用こそが組織活性化のカギだという考え、 そして三つ目は協会での意思決定プロセスをできるだけ透明なものにしようという意図です。

わが日本ボート協会としても、しっかり考えなければなりません。 しかるべき決断をしなければならない時が、遠からず来るような気がします

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最初にご紹介したデニス・オズワルドFISA会長が来日した目的は、 じつは「日本スポーツ仲裁機構(JSAA)設立10周年記念シンポジウム」の基調講演者として招かれたものです。

JSAAは水泳の千葉すず選手の提訴事件を契機に10年前に設立されましたが、 世界的には1984年に「スポーツ仲裁裁判所(CAS)」が設立されています。 オズワルドさんはこのCASの設立にも深くかかわっており、現在も仲裁人を務めているなど、 いわばスポーツ仲裁問題の世界の第一人者なのです。

6月19日(水)のシンポジウムはわたしも聞きに行ってきました。 オズワルドさんの話の中でわたしが「なるほど」と感心したのは次のような点です。

「スポーツの選手、指導者、協会役員はお互いに尊重しあうことがなにより大切だ。 そして役員、指導者はまずアスリートの声をよく聴く義務がある。同時に権利もある。 その意味でわたしは1990年にアスリート委員会をつくった。」

「スポーツにはさまざまな価値がある。 ”勝たない”価値もあるのだ。めげずに励めば次には勝てる。人生の学校だ。」

また他のパネリストの意見も参考になりました。

小寺彰さん(CAS及びJSAA仲裁人、東大教授)によると、 「CASは”法”で裁く専門法廷。一方JSAAは”法”の外にスポーツはある、という考え。基本スタンスが違う。」

「スポーツは大切な日本の国民文化だ。しかしかつての相撲とか最近の柔道をみると、 はたして日本のスポーツは適正に運営されているのかどうか、いささか心配になる。」

このような有意義な意見を、ボート協会でも真剣に討議して現場の活性化にも反映していきたいと思っています。

以上