公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

日本ボート協会アンチ・ドーピング規定

2004年05月19日
社団法人 日本ボート協会
日本ボート協会アンチ・ドーピング規定

前文

日本ボート協会はスポーツにおけるドーピング撲滅活動を積極的に推進することを宣言する。その基本となる規範は2003年3月5日に採択された「スポーツにおけるドーピングに関する世界会議決議」に基づく。従ってここに制定する日本アンチ・ドーピング規定は世界アンチ・ドーピング機構が制定する世界アンチ・ドーピング規程(The World Anti-doping Code)ならびにその禁止リストに準拠するもので、本規定に記載のない事項については世界アンチ・ドーピング規程に従う。
競技者は競漕規則と同様に本規定を熟知し、また最新の禁止物質・方法についての情報を知る必要がある。日本ボート協会はドーピングに関する最新の情報を競技者に対し継続的に発信する必要がある。

第1章 総則

第1条

この規定は日本ボート協会アンチ・ドーピング規定(以下「本規定」)と称する。

第2条

本規定は社団法人日本ボート協会(以下「本会」)が制定する。

第3条

本規定は日本ボート協会競漕規則第61条第3号ならびに競技者規定第2条第3号に記載される「ドーピング」について定義し、ドーピングに対する検査、制裁に関する規定等により構成される。

第4条

ドーピングとは世界アンチ・ドーピング機構(以下「WADA」)が制定する世界アンチ・ドーピング規程第4条に規定される禁止リスト〈以下「禁止リスト」〉に掲載された禁止物質の使用・所持および禁止方法の行使とその強要・推奨・幇助である。

第5条

本会はドーピングを禁止する。

第6条

本会はドーピングを予防する方策を継続的に実施する。

第7条

本規定は本会に登録された競技者(以下「競技者」)ならびに競技者にドーピングを強要・推奨・幇助し得る立場にある者(以下「競技者関係者」)に適用される。

第8条

本会はドーピング検査によりドーピングの実施を検定する。

第9条

本会はドーピング検査によりドーピングの実施が認定された競技者ならびに競技者関係者に対し制裁を科する。

第10条

ドーピングを行わないことは競技者自らの義務と責任である。ドーピングを強要・推奨・幇助せず、また容認しないことは競技者関係者の義務と責任である。

第11条

国際ボート連盟(以下「FISA」)ルールブック第81条の細則6.「加盟国協会の責任」7.「競技外検査に関しての加盟国協会の責任」に規定される本会の責任は本規定を適用して実施される。

第2章 ドーピング検査と認定

第12条

ドーピング検査はドーピングが実施されていないかどうかを明らかにするために行われる。

第13条

ドーピング検査とは本会が日本国内で実施する競技者からの検体採取、検体分析、分析結果の確認という一連の行為を指す。

第14条

ドーピング検査は競技者からの検体採取を大会期間中に行う「大会内検査」と大会期間以外に実施される「大会外検査」の2種類に分類される。

第15条

ドーピング検査は事前の通告を持って,あるいは通告なしに実施される。

第16条

大会内検査は本会が主催または主管する大会決勝レース出漕者の中から、当該レース発艇後に抽選で選ばれた競技者を対象に実施される。 ドーピング検査を実施する大会は本会医科学委員会委員長(以下「委員長」)が指定する。

第17条

大会外検査は検査施行年あるいは前年に開催されたオリンピック、アジア大会、世界選手権、世界ジュニア選手権、ワールドカップ等国際大会に出場した競技者あるいはドーピング検査施行年のJOC強化指定選手の中から委員長が指定した競技者を対象に、委員長が指定した期日に実施される。指定した競技者に検査実施が通告されるのは検査当日とし、指定した期日が事前に公表されることはない。

第18条

競技者がドーピング検査を拒否し,検体の採取に応じない場合は,当該競技者のドーピング検査結果は禁止リストS4.蛋白同化剤が陽性と同等とみなされ、当該競技者のドーピング実施が認定される。

第19条

検体の分析は財団法人日本アンチ・ドーピング機構(以下「JADA」)を介し、WADA認定の検査機関で実施される。

第20条

検体の分析は大会内検査では禁止リストに記載された物質について,大会外検査では禁止リストS4,5,6,7,8に記載された物質について実施される。

第21条

A検体の検査結果は検査機関あるいはJADAから委員長または委員長が指定する医科学委員会委員(以下「委員」)に報告される。

第22条

A検体の検査結果が陽性であった場合には、委員長または委員は本会理事長に報告し,競技者へは競技者が登録されている各都道府県ボート協会(以下「加盟協会」)を通じて文書で通告する。

第23条

競技者は通告を受けてから7日以内にB検体の分析を要求できる。競技者がB検体の分析要求の権利を放棄するか,7日以内にB検体の分析要求がない場合には,ドーピング検査結果は第30条で規定する場合を除き陽性とされ、競技者のドーピング実施が認定される。

第24条

競技者がB 検体の分析要求をした場合、委員長はB検体の検査を検査機関に依頼する。この検査には当該競技者と当該競技者が登録されている加盟団体の代表者1人が本会医科学委員会委員とともに立ち会うことができる。

第25条

B検体の検査結果は検査機関あるいはJADAから委員長または委員に報告される。報告を受けた委員長または委員は本会理事長に報告する。

第26条

B検体の検査結果が陽性の場合にはドーピング検査陽性が確定し当該競技者のドーピングの実施が認定される。検査結果が陰性の場合にはドーピング検査陰性が確定し当該競技者のドーピングの実施がないことが認定される。

第27条

ドーピングの実施が認定された場合,本会理事長は委員長を長とするドーピング調査委員会(以下「調査委員会」)を組織する。調査委員会は当該競技者関係者を対象として、競技者にドーピングを強要・推奨・幇助した関係者の有無について調査し,調査結果を理事長に報告する。報告はドーピングの実施が認定された日から28日以内に行われる。

第28条

本会理事会は第27条の調査結果をもとに、競技者関係者に競技者へのドーピングの強要・推奨・幇助が存在したか否かを決定する。

第29条

本会理事会は制裁を決定する前にドーピングの実施が認定された競技者と競技者にドーピングを強要・推奨・幇助した競技者関係者に事情聴取を実施する。

第30条

治療目的に使用される禁止リストに掲載された物質の使用については、WADAの定める国際基準に従う。禁止リストに掲載された物質を治療目的に使用する場合、当該競技者あるいは競技者関係者は本会が定める申請書を本会に提出しなければならない。

第3章 制裁

第31条

本会理事会は第29条の事情聴取後7日以降14日以内に当該競技者あるいは当該競技者関係者の制裁を決定し,その内容を当該競技者の登録された加盟協会と当該者本人に通知する。

第32条

A検体の検査結果が陽性の場合、検査結果が本会理事長に報告された時点で、本会が主催あるいは主管する大会(以下「大会」)への当該競技者の参加資格は一時停止される。

第33条

ドーピング検査結果陽性とされた禁止物質が禁止リストの指定物質であった,場合には、当該競技者の大会出場停止期間は下記のとおりとする。1回目の違反の場合:警告、戒告処分とし、将来の競技大会における参加資格剥奪期間をゼロとする処置を最低限とし、最長は大会参加資格剥奪期間1年間までとする。2回目の違反の場合:2年間の大会参加資格剥奪。3回目の違反の場合:生涯にわたる大会参加資格剥奪とする。上記以外の禁止物質が陽性であった場合にはその違反が1回目の違反である場合には2年間の大会参加資格剥奪、2回目の違反の場合生涯にわたる大会参加資格剥奪とする。

第34条

大会内検査の結果が陽性で、ドーピングの実施が認定された場合、競技者および競技者が構成員となるクルーの当該大会での記録は予選にさかのぼって抹消される。また当該競技者および競技者が構成員となるクルーが参加したレースで当該クルーより下位のクルーの順位が繰り上がる。

第35条

競技者にドーピングを強要・推奨・幇助した競技者関係者の制裁は、当該者のド-ピングの実施における関与の度合いと職務の内容・種類に応じ決定される。

第36条

禁止方法の実施が認定された場合には、その違反が1回目の違反である場合には2年間の大会参加資格剥奪、2回目の違反の場合生涯にわたる大会参加資格剥奪とする。

第37条 

世界アンチ・ドーピング機構(WADA)、IOC、FISA、JADA、財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、財団法人日本体育協会や他の競技連盟が行ったすべてのドーピング検査の結果に対し、そのドーピング検査が世界アンチ・ドーピング規程に従って行われたものである限り、本規定の制裁は適用される。

第4章 細則・その他

第38条

本規定で定めるドーピング検査の手続きについての細則は別に定める。

第39条

本規定の変更は本会理事会の議による。

第40条

禁止リストはWADAが公表するホームページ
http://www.wada-ama.org/en/t1.asp)に掲示される最新のものを適用する。

附則

  1. 本規定は平成14年6月1日より施行される。
  2. 平成16年5月19日一部改定。
日本ボート協会アンチ・ドーピング規定細則

第1条

本規定第38条に従い、ドーピング検査の手続きについて以下に定める。

第2条

ドーピング検査の実施責任は本会医科学委員長(以下「委員長」)に存する。医科学委員長は若干名のドーピング検査員(以下「検査員」)を指名する。

第3条

検査員は競技者からの検体採取と検査機関への検体の搬送を掌る。検査員はメディカル・オフィサー、テクニカル・オフィサー、エスコート、クーリエで構成される。

第4条

ドーピング検査対象競技者(以下「対象者」)は、ドーピング検査の対象になったことをエスコートから通告された直後からA・B検体の検体容器がコードナンバーシールで封印され、対象者が手続きの公正さを確認し検査用紙にその旨記載署名するまでの間、検査員の監視下になければならない。

第5条

検体の採取は検査員が指定する場所(以下「検査室」)で実施される。

第6条

検査室には競技者の指名する付き添い者1人が同席することができる。

第7条

大会内検査において、エスコートは委員長の指名したドーピング検査対象競技者がレース終了後水上から上陸する際に、ドーピング検査対象者になったことを通告する。

第8条

大会外検査では、エスコートは任意の場所で委員長の指名したドーピング検査対象競技者にドーピング検査対象者になったことを通告する。

第9条

対象者はエスコートから通告を受けてから60分以内に検査室に入室する。その間排尿は許されない。入室後対象者は示されたコードナンバー群からひとつを選び、さらに密閉された採尿容器を選んで、対象者と同姓のメディカル・オフィサーあるいはテクニカル・オフィサー(以下「オフィサー」)の監視のもとに、75ml以上の尿を前述の採尿容器に採取する。1回の採取で75ml以上に満たない場合、75ml以上になるまでこの操作を繰り返す。排尿を促すため検査室には、密封された飲料用ミネラルウォーター(以下「水」)が用意されなくてはならない。対象者は必要な尿量が採取されるまでの間、この用意された水を任意の量飲用できる。

第10条

検体採取が完了した後、対象者は複数の密封された検体容器セットの中からひとつを選び、採取した尿をA検体容器に50ml以上、B検体容器に25ml以上分け入れる。その後、検体容器を密封し入室時に選択したコードナンバーが刻印されたコードナンバーシールで検体容器を封印する。

第11条

対象者は入室時より72時間さかのぼって使用した薬物を申告記載する。

第12条

対象者は検査用紙と検体容器を封印したコードナンバーシールに示された番号が一致していること、一連の検体採取手続きが公正に行われたことを確認して、その旨を検査用紙に記載し署名する。付き添い者がいる場合、付き添い者も署名する。

第13条

オフィサーは検査用紙と検体容器を封印したコードナンバーシールに示された番号が一致していること、検査用紙に記載漏れがないことを確認して、その旨を検査用紙に記載し署名する。

第14条

検体はクーリエによってJADAあるいは検査機関に運ばれる。

第15条

対象者が検体の提供を拒否した場合、テクニカル・オフィサーは検体採取を拒否することにより対象者がこうむる不都合、すなわち、ドーピング検査を拒否したとみなされ制裁を受ける事を説明しなければならない。なお対象者が検体提供を拒否する場合は、テクニカル・オフィサーはその旨を検査用紙に記載、署名し対象者にも署名するよう要求する。

第16条

対象者からドーピング検査開始後から制裁が決定した後7日以内に本会に対し当該ドーピング検査に対する異議申し立てが提出された場合、本会理事長は審査会を設置する。

第17条

審査会は法律専門家、当該検査に関与のない医事専門家、薬理専門家を含む若干名で構成され、本会会長より委嘱する。

第18条

審査会は対象者から提出された異議申し立てを審理し、本会に対しその結果を答申する。

第19条

前条の答申は対象者と本会理事会に提示される。

第20条

本会理事会は答申を受け最終的な対象者への制裁を決定する。